1月のクアルコムとの裁判では、5G対応のモデムチップの調達先として、台湾メディアテックとサムスンを検討していることをアップルの幹部が法廷で証言した。サムスンはスマホではアップルの最大のライバルだが、背に腹は代えられないのだろう。
それに加えて1月、クアルコムのお膝元である米カリフォルニア州サンディエゴ市で、アップルが大量の「モデムチップの技術者」を募集している動きも現地メディアで報じられた。
ただ、ライバルから技術者を引き抜いてモデムチップを内製化しようにも、製品化までには数年かかるとみられている。
つまり、19年中に5G対応のiPhoneを出荷することは、クアルコムに頭を下げて和解でもしない限り、ほぼ不可能という状況に追い込まれているのだ。
アプリ開発者を
アップルから引き離す
5G対応でのアップルの出遅れは、クアルコムとグーグルにとって絶好のチャンスだ。
2月25日のクアルコムの会見には、グーグルのボブ・ボーチャーズ副社長がゲストとして登壇した。アモンCEOが「5Gの魅力的なサービスを先行して体験できるのはアンドロイドユーザーだ」と持ち上げると、ボーチャーズ副社長は「5Gスマホを動かせる、初めてかつ現時点で唯一のOSがアンドロイドであることに興奮している」と応じて蜜月ぶりをアピール。クアルコム・グーグル連合が、技術でアップル陣営をリードしていることをちらつかせた。
5Gの到来を前に、今年のMWCではアップルを除く世界のスマホ大手が軒並み5Gスマホを発表。さらに、画一的だったスマホのデザインに変化が起き始めた。
サムスンとファーウェイのフォルダブル(折り畳み)スマホに代表されるように、大画面など5Gの大容量の楽しみ方を模索するアイデア合戦の様相を呈していた。これらの5GスマホのOSは全てアンドロイドで、19年の第2四半期から随時出荷が始まる。
ただ、5Gスマホが登場したとしても、通信網の整備が進んでいないため、今年5Gスマホを買うメリットはほとんどないという声が業界では主流だ。
5Gの環境が広く普及してから、アップルが5G対応端末を市場に投入しても十分間に合うという見方も多い。「5G対応のiPhoneが出なければ、消費者に5Gは普及しない」と断言する通信会社の幹部もいる。
しかし、5Gを活用するサービスでいち早く勝負したい気鋭のアプリ開発者や、そうしたサービスで差別化を狙う法人ユーザーが取ることのできる選択肢は、今はアンドロイドしかないのである。