「セクハラゼロ職場」実現に向けて、管理職が意識すべきこととは?職場はもちろん、夜の飲み会であっても、リーダーが毅然とした姿勢を見せ続けることが、セクハラを生まない職場づくりにつながる Photo:PIXTA

今の時代、女性社員への接し方は一歩間違えると信用を落とすどころかセクハラトラブルにもなりかねない。デキるビジネスマンは女性社員をどのように指導し、鼓舞しているのか。NASDAQに上場している外資系IT企業「ライブパーソン (LivePerson)」の日本法人代表として働く傍ら、多数のビジネス書籍を出版する金田博之氏に聞いた。(清談社 島野美穂)

優しすぎるのも
女性社員には不満の種?

 デキるビジネスマンが陥りやすい失敗の1つに、「己のコミュニケーション能力を過信する」というものがある。良かれと思った言動が、部下を傷つけていることがあるのだ。今でこそ女性管理職、女性経営者を対象に、自分の能力をどう生かすかというテーマのセミナーで講師を勤める金田氏にも、過去には失敗があった。

 大学卒業後、グローバルに展開する外資系大手ソフトウェア企業SAPジャパンに入社し、30歳で部長に着任した金田氏は、男女8人の部下を持つことになった。良い関係性を築いていると思いきや、部下たちが明かした本音は予想外のものだった。

「部下の女性社員たちから『金田さんは優しすぎる』という評価をもらって驚きました。元々体育会系で育ってきた私は、男性社員は当たり前のように呼び捨てでしたが、女性社員は“さん”付けで呼んでいたんです。要するにそれらが男女を区別していることになり、部下の間にちょっとした不満を生んでいたんです」

 ありがちだが、意外と気が付かないこのケース。この場合は、全員を呼び捨てにするか、あるいは“さん”付けにそろえるという解決法がある。この出来事によって、金田氏は自身のマネジメント力が未熟であることと、無意識のうちに男女を分けて考えていることを知った。

「同じ職場で働く仲間に対しては、『女性だから』『男性だから』という先入観は捨て、同じように指導していくべきです。たしかに、性別による得手不得手がまったくないとはいいません。しかし、デキるビジネスマンに求められるのは、個人の能力を見抜き、伸ばしていく能力のほうです」

 そうはいっても、女性社員と男性社員で、完全に接し方を同じにしろというのは簡単なことではない。金田氏は「会話の質を意識すること」とアドバイスする。

「私が実際に心がけているのは、加点式の会話をすることです。たとえば、部下が『料理ができない』と言ったとします。その際に『なんでできないの?』と言ってしまうのは、減点式。そうではなく、『今覚えている途中なんだよね』と、良い面を引き出すのが加点式です。これは簡単な例ですが、普段から、自分が加点式、原点式のどちらで話すことが多いかを思い出してみてください」