富裕層必見! 資産防衛&節税術#4Photo:PIXTA

「企業価値」について語るとき、経営者がしばしば混同している2つの概念がある。それは「相続税評価額」 と「会社の買収価額(M&A価値)」だ。『富裕層必見! 資産防衛&節税術』の第4回では、相続や事業承継のケース、M&Aのシーンにおける取引相場のないケース、それぞれで会社の価値について解説。その上で、両者の価値を有利に変えるために、経営者が肝に銘じるべき3つのポイントを伝授する。(税理士法人レガシィ代表社員税理士・公認会計士 天野 隆)

相続・事業承継とM&Aで
会社の価値は大きく変わる

 筆者はこれまで数多くの相続案件や事業承継に携わってきたが、経営者からよく聞く質問がある。

「会社の買収価額と相続税評価はなぜこんなに違うのですか?」
「うちの会社、相続税評価が高すぎるんじゃないか?」
「なぜ上場会社と比較されるんですか?」
「説明を受けても、分かりにくいところがある」

 相続案件や事業承継に携わっていると、経営者の方々から、これらの言葉が本当に頻繁に出てくる。

 一方でいざM&Aの場面になると、同じ会社なのに次のような声に変わる。

「え?こんなに高く売れるのですか?」
「いや、買う側からするとこんな高値は出せない」
「相続税評価とはずいぶん違うのだねえ」

 まったく逆の反応だ。これこそが本題である。なぜ同じ会社の評価なのに、価値が大きく変わるのか。

 その仕組みを理解すると、経営者として「どの場面でどんな価値を使うべきか」がクリアになる。

 結論からいえば、答えは非常にシンプルだ。次ページでは、その答えと共に経営者が肝に銘じるべき3つのポイントを解説しよう。