そして、バルセロナが動けば宿命のライバルも呼応するとばかりに、マドリードに拠点を置くスポーツ紙で、約270万部と国内最多の発行部数を誇る『マルカ』も、レアル・マドリードが久保の代理人に対して現状を確認する連絡を入れた、と対抗するような記事を掲載している。

「代理人が誰なのか私も知らないというか、私やクラブの理解では、代理人はいない、となっているので。本人も『今は(FC東京で)試合にも出ていて、非常に充実している』と言っていますし、今後のことについても特に話していません」

 一気にかまびすしさを増した久保を取り巻く状況に、大金社長も苦笑いを浮かべるしかなかった。代理人に言及した部分から察するに、久保が未成年ということもあって、同社長とも親交がある久保の父親が現時点では窓口的な役割を果たしているのかもしれない。

FC東京が練りに練った
「天井効果」排除した育成法とは

 失意の帰国を余儀なくされた久保が、FC東京で刻んできた軌跡をあらためて振り返ってみる。そこにはフィジカル面の成長度合いを含めたタイミングを慎重に見極めながら、FC東京が練った周到な計画のもとで、いわゆる「天井効果」を排除する措置が施されてきたことが分かる。

 サッカーの育成年代でよく言われる「天井効果」とは、突出した才能をもつ若手を年齢に合わせたカテゴリーでプレーさせ続ければ刺激が少なくなり、マンネリ感を覚え、やがては伸び悩んでしまう状態を指す。時にはお山の大将となって、成長を止めてしまうこともあるだろう。

 そして、FC東京による「天井効果」を排除する措置とは、要は「6-3-3」の学校制度に則って下部組織で昇格させていくのではなく、ヨーロッパに倣った実力主義の下で天井の高さを徐々に上方修正。久保のモチベーションを刺激して、成長を加速させてきたことを意味する。

 U-23チームをJ3に参戦させていたFC東京は、またとない環境が整っていた。そして、J1リーグでも再び天井が近づいてくれば、チャレンジの舞台はおのずと日本から飛び出す。中田英寿が、中村俊輔が、そして本田圭佑らが旅立っていったように、視線はヨーロッパへと向けられる。