今後JDIも、中国でのパネル生産を視野に入れているようだが、そうしたときに市場へのアクセスのしやすさという点で、中国資本が入っていることは悪いことではない。また、今は沈静化しているものの、潜在的に存在している反日感情という政治的リスクの低減にも役立つ。

 かつて、中国で反日運動の高まりが見られたときに、日本資本の多くの店舗が攻撃の対象となった。そのときファミリーマートは、主に中国で事業を展開している台湾の頂新グループとの合弁事業として中国に進出していたので、店舗に「この店舗は台湾資本の店舗です」という張り紙をすることで、攻撃の対象から免れたという。

 アップルやサムスンなどのスマートフォンが減速するなか、ファーウエイ、Oppo、Xiaomiなどの中国ブランドのスマートフォンは依然として堅調であり、中国市場を狙う中小型パネルメーカーとして台湾や中国の資本が入ることは、悪いことばかりではないと言える。

「情報の粘着性」を考えると
日本の雇用に心配はない

 ただし、JDIが装置産業である液晶パネルの会社であることには、若干の不安がある。シャープや東芝の家電などの強みは、新しい商品や技術のアイデアを考える日本人技術者とその組織の能力であり、こうした能力は暗黙知的であって容易に海外に移転できるものではない。

 これを経営学では「情報の粘着性」という。ある地域のある組織に粘着した能力や情報は容易に外国に移転できない、というものである。著者がシャープや東芝に外資が導入されても、日本の雇用に心配がないと考えている理由もここにある。

 しかし、液晶パネルなどの技術は量産化、歩留まりの改善などが何よりも大切な技術であり、開発拠点と生産拠点が近いことが重要である。新しいJDIの経営体制でも、当面は千葉県の茂原に有機ELの生産拠点を構える見通しで、すぐに大きく組織が変わることは考えにくい。