シンギュラリティ大学の起業家プログラムをリードするパスカル・フィネットは、学生たちに向かって「もし3年間自由な時間ができたら、何をしたいか?」「もし100億円の投資が得られたら、何をしたいか?」といった質問を必ずぶつけるようにしているという。
「あたりまえ」を壊すことにモチベーションを持っている起業家といえども、なかなか「100億円」を使い切るのは容易ではないはずだ。こうした途方もない設定を質問のなかに入れ込むことで、無意識のうちに自分に課している制約を外すことができる。これも余白のデザインとしてはパワフルな方法だろう。
これらの妄想クエスチョンは、日々のジャーナリング(日記)のなかに組み込んでもいい。感情を書きなぐるだけのジャーナリングがまずはオススメだが、これに慣れてきたら、次のような別バージョンも試してみよう。
□ 欲望ジャーナリング―「○○してみたい」「○○になりたい」など、自分の欲望に目を向けて、それを言葉として吐き出す
□ 妄想ジャーナリング―「もし1ヵ月に1000億円使えるとしたら……」などの架空の設定を入れて、そこから妄想を膨らませる
ノート以外の紙に書く場合は、なるべくA4サイズ以上の大きなキャンバスを用意することをおすすめする。大きな紙に大きな文字で書くと、心理的にも爽快感が得られるからだ。
1枚ずつページが剝がせるタイプのノートがいいだろう。フリクション式で消せる3色ボールペンなどを使って、思い切りよく手を動かすようにする。ふだんの仕事で使っているのとは違うペンを用意するのもいいだろう。
株式会社BIOTOPE代表/チーフ・ストラテジック・デザイナー。大学院大学至善館准教授/京都造形芸術大学創造学習センター客員教授。東京大学法学部卒業、イリノイ工科大学デザイン研究科(Master of Design Methods)修了。P&Gマーケティング部で「ファブリーズ」「レノア」などのヒット商品を担当後、「ジレット」のブランドマネージャーを務める。その後、ソニーに入社。同クリエイティブセンターにて全社の新規事業創出プログラム立ち上げなどに携わる。ソニー退社後、戦略デザインファーム「BIOTOPE」を起業。BtoC消費財のブランドデザインやハイテクR&Dのコンセプトデザイン、サービスデザインプロジェクトが得意領域。山本山、ぺんてる、NHKエデュケーショナル、クックパッド、NTTドコモ、東急電鉄、日本サッカー協会、ALEなど、バラエティ豊かな企業・組織のイノベーション支援を行っており、個人のビジョンを駆動力にした創造の方法論にも詳しい。著書に『直感と論理をつなぐ思考法――VISION DRIVEN』『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』(クロスメディア・パブリッシング)がある。