もはや「自己分析」は就活のためのものではなく、大人が自分の人生を見つめ直し、今後のライフプランを描くためのものとして、ビジネスパーソンを中心に、急速に浸透しています。
これまでは学生が就活のためにやるものと思われていましたが、いまは「メモ魔会」という読書会が全国で立ち上がり、誰もが自己分析を行う時代になりました。
発売4ヵ月にして早くも34万部のベストセラーとなっている『メモの魔力』。SHOWROOM代表の前田裕二氏が「メモによって自らを動かし、世界を動かす」と、メモの力を紐解いたこの本には、もう一つ重要な要素が含まれています。それは「自己分析」。巻末の「自己分析1000問」によって、読者は「自分が本当は何を手にしたいのか」を知ることができます。
この「自己分析」という概念を就職活動にはじめて持ち込んだのは、キャリアデザインスクール「我究館」創業者の杉村太郎氏(故人)が執筆した『絶対内定』シリーズ。11年連続大学生協第1位の本書は、現・我究館館長の熊谷智宏氏によって、内容が毎年バージョンアップされ、いまや自己分析は内定獲得の鉄則として、あらゆる就活生が経験する「通過儀礼」と言っても過言ではありません。
『絶対内定』シリーズ共著者であり我究館の現在の館長である熊谷智宏さんと『メモの魔力』著者の前田裕二さん、その仕掛け人で幻冬舎・編集者の箕輪厚介さんの3人が語り尽くします。
(構成/大矢幸世+ダイヤモンド社・和田史子、撮影/疋田千里)
「前田裕二は『メモの奴隷』」
1987年東京生まれ。2010年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、外資系投資銀行に入社。11年からニューヨークに移り、北米の機関投資家を対象とするエクイティセールス業務に従事。株式市場において数千億〜兆円規模の資金を運用するファンドに対してアドバイザリーを行う。その後、0→1の価値創出を志向して起業を検討。事業立ち上げについて、就職活動時に縁があった株式会社DeNAのファウンダー南場に相談したことをきっかけに、13年5月、DeNAに入社。同年11月に仮想ライブ空間「SHOWROOM」を立ち上げる。15年8月に会社分割によりSHOWROOM株式会社設立、同月末にソニー・ミュージックエンタテインメントからの出資を受ける。現在は、SHOWROOM株式会社代表取締役社長として、SHOWROOM事業を率いる。2017年6月には初の著書『人生の勝算』を出版し19刷8万部超のベストセラー。近著の『メモの魔力』は、発売2日で17万部突破、現在34万部に。
箕輪厚介(以下、箕輪) 先ほど「1億総自己分析時代」って言ったけど、社会人こそ自己分析をすべきだと思うのは、僕自身、インタビュー取材を受ける機会があると、そのたびに自分が成長している気がするんです。
インタビューって、毎回同じことを聞かれるじゃないですか。「ターニングポイントは?」とか、「失敗したときにどう克服しましたか?」とか。で、編集者としてはPVも取りたいから、それなりにドラマチックにストーリー化して話していると、一種の「自己暗示」にかかるんです。「僕はこういう人間なんだ」と。しかもそれが加速していく。
で、気づいたんですけど、自己分析にもそういう側面がありますよね。もちろん、嘘をつくわけではなく、純粋に掘り下げていけばいいんだけど、自分をストーリー化していくことによって、「理想の自分」になるような自己暗示がかかっていく。起業家が本を書くのも、きっと同じ効果があると思いますね。
前田裕二(以下、前田) 「ありのままの自分」を100パーセント本に載せている人はたぶんほとんどいなくて、ちょっとずつ「あるべき自分」の要素も含まれているんですよ。すると、いまの自分とあるべき自分との差分が本を書くことで埋まっていく。よく箕輪さんに、「僕はもう、“メモの奴隷”だから」って言いますもん。会食中さえ「あれ? メモらなくていいんですか?」って人から言われるし。
箕輪 かわいそう(笑)。
前田 家にメモを忘れたら、落ち着かない。『メモの魔力』を書いたことで、あらゆるファクトをメモって、抽象化して転用していかなくてはならない、強制力という魔法がかかったんです。そうすると、おのずと以前より成長しますよね。そうやって本で宣言することで、「あるべき自分」にますます近づいていくんです。