今年も就職活動は「売り手市場」と言われている。しかし、それでも第一志望の企業から内定をもらえる学生はほんの一握りにすぎない。いったい、どんな学生は望みどおりのキャリアを手にしているのか。キャリアデザインスクール我究館 館長、書籍『絶対内定』シリーズ著者の熊谷智宏氏に近年の就活生の傾向を聞いてみた。

売り手市場で重要なのは「優秀さ」より「自己分析」Photo:milatas-Fotolia.com

僕は昨年も新卒採用の現場で、学生と企業の両者と対話を繰り返してきた。その中で、強く感じることのひとつに、売り手市場の今こそ、「自己分析」ができている学生から内定をもらっている、という事実がある。特に自己分析を通して「志望動機」を明確にできている学生は結果を出している。

なぜこのような現象が起こるのか。3つの切り口から解説していこう。

「志望動機」が明確な学生はインターンシップに通過しやすい

採用活動の入り口として定着したインターン。企業は就活生が大学3年生になる年の6月から募集をはじめ、年明け頃まで様々なプログラムを通じて学生を受け入れる。企業がインターンを開催する目的はいくつかあるが、もっとも大きなものは「自社に興味を持っている」優秀な学生を早期に見つけること。いわゆる、「青田買い」と呼ばれる活動だ。

そのため、書類や面接といった選考を課し、学生の自社への意欲を確認する。ここでもっとも重点的に聞かれるのが「志望動機」だ。企業側からすれば、インターンプログラムの最中に確認できる優秀さよりも、面接では「参加への意気込み=志望動機」を確認しておきたい。応募書類で聞かれる設問が「当社のインターンに参加する動機をお聞かせください」や「今回のインターンシップのプログラムを通して何を得たいですか」といった志望動機を聞く設問1問のみで書類選考をする企業も多い。ここで自己分析ができている学生は、明確な志望動機が書ける。そして、晴れてインターンプログラムに参加できると「青田買い」のリストに入れる可能性が高まるため、内定がグッと近づくのだ。

OBOG訪問で、明確に「志望動機」が語れると優秀に見える

近年の傾向として「OBOG訪問」が「選考」になっていることが挙げられる。本来、学生が志望企業で働く先輩社員を訪問し、仕事のやりがいや、大変さを聞くことが目的だったこの活動に、異変が起きているのだ。例えば、学生からは次のような話をよく聞く。「質問するつもりでOBに会い行ったら、志望動機や学生時代頑張ったことをひたすら聞かれた」と。いまや学生が逆に「質問をされる」場になっており、立場が逆転しているのだ。

企業側の人に聞いてみたところ、次のような答えが返ってきた。「OBOG訪問で、志望度の高い優秀な学生がいたら、人事に繋ぐように指示されている。そのために、自然と面接のような会話になる。しかし、売り手市場になるほど、学生が自己分析を怠り、曖昧な志望動機しか話さなくなるというのはよく感じる。志望動機をしっかり語れるだけでもずいぶん優秀に見える」

自己分析ができていると、こういった非公式の選考でも有利に運ぶのだ。

採用担当者が内定を出しづらい「優秀だけど志望動機が曖昧な人」

そして最後に、採用直結の本選考における書類や面接でも、「志望動機」は重要になってくる。特に内定を出すかどうかが決まる最終面接では、志望動機こそが勝敗の決め手となる。背景にあるのは、売り手市場が生み出している「大量内定辞退」だ。採用担当者側からすると、長い期間をかけて、やっと採用に至った学生には、何としてでも入社してほしい。しかし、そういった優秀な学生ほど複数社から内定をもらう傾向にある。その結果、彼らは大量に内定を辞退する。辞退数が増えると採用計画も狂ってしまう。そのため、採用担当者は「絶対に入社してくれるのか」を慎重に見極め、内定出しをすることになる。その判断材料となるのは、優秀さより「志望動機」なのだ。そして、「志望動機」を確かなものにするには、徹底した自己分析が欠かせない。

説明してきた通り、すぐそこにあるインターンの選考やOBOG訪問でも自己分析をしておくことは非常に有効となる。来年の3月までにやればよいと思っているとしたら要注意だ。準備不足のせいでインターン参加のチャンスを失っていた、OBOG訪問で気づかぬうちに評価を下げていた、といったことにもなりかねない。今日から自己分析をはじめて、自分の考えを整理してほしい。