風雲急を告げる米中摩擦はトランプ再選にとって「諸刃の剣」
にわかに高まる米中の緊張に対し、米国内での政治的な反発は思いのほか盛り上がらない Photo:PIXTA

にわかに高まる米中の緊張に対し、米国内での政治的な反発は思いのほか盛り上がらない。来年の大統領選挙を考えれば、いずれは中国とのディールを求める力学が高まるはずだが、少なくとも現時点では、大統領選挙への計算がむしろトランプ大統領を強気な姿勢に駆り立てている。(みずほ総合研究所欧米調査部長 安井明彦)

盛り上がらない
対中関税引き上げへの批判

「共和党はトランプ大統領の関税に降参」

 対中関税の引き上げに関し、米有力政治専門サイトの「POLITICO」は、このようなタイトルの記事を掲載した。トランプ大統領の強硬な姿勢に、自由貿易を支持しているはずの共和党の議員たちが、それほど強く反対していない、というのだ。

 一見すると、共和党議員の反応は奇異に映る。なにしろ、対中関税への共和党議員の反発は、鉄鋼・アルミ製品への関税引き上げの際よりも控えめだという。共和党の大事な票田である農業分野では、中国による報復措置の対象となった大豆を筆頭に、米中摩擦の痛みが顕在化している。来年11月の大統領選挙では、あわせて議会も改選となる。支持者の痛みは、共和党議員にとって無視できないはずだ。

 もっとも、対中関税引き上げへの批判が盛り上がらない謎を読み解くには、米中摩擦を動かしてきた原動力を理解する必要がある。そこから浮かび上がるのは、トランプ大統領の強硬姿勢を支える力学の存在である。

「信念」「潮流」「計算」
対中摩擦を動かす3つの原動力

 米国において、対中摩擦を動かしてきた原動力は3つある。

 第一は、トランプ大統領の「信念」である。1980年代の日本批判に象徴されるように、貿易不均衡に対するトランプ大統領の懸念は、政界に進出する前から一貫している。「前任のオバマ大統領とは逆の政策を行う」というもう1つの一貫した姿勢も、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定による対中包囲網を意図したオバマ大統領と異なり、2国間交渉で中国に厳しく接する素地となっている。