近畿連続青酸殺人事件で3件の殺人罪と1件の殺人未遂罪に問われ、1審京都地裁で死刑判決を受けた筧千佐子被告(72)の控訴審判決で、大阪高裁の樋口裕晃裁判長は24日、1審判決を支持し筧被告の控訴を棄却した。結婚相談所を介して交際や結婚した男性が相次いで死亡、多額の遺産を手にしていた筧被告。小説や映画のようなリアル「後妻業の女」は3月1日の初公判に出廷せず、控訴審は新たな証拠調べや被告人質問などの審理を実施しないまま即日結審していた。(事件ジャーナリスト 戸田一法)
認知症で「壊れたレコード」
開廷時刻の午前11時を数分過ぎた後、筧被告はグレーのトレーナーを着て入廷し、裁判官席と傍聴人席に向かって一礼して着席。難聴で聞き取りにくいためヘッドホン型の補聴器を着用し、樋口裁判長から名前や生年月日を尋ねられると、やや早口に答えた。
判決言い渡しの間はまっすぐに裁判官席を向いていたが、腕を小刻みに動かすなど少し落ち着かない様子も。途中、目元に手を当てて、涙を拭うようなしぐさも見られた。判決言い渡し後は、傍聴人席に向かって再び一礼し、ゆっくりと法廷を後にした。
弁護側は控訴審初公判で、1審に続き「男性らは病死だった可能性がある」などと無罪を主張。また筧被告が重度の認知症で「訴訟能力を喪失している」とし、公判停止か精神鑑定の実施を求めていた。
しかし高裁はいずれも認めず、実質的な審理がないまま結審するという異例の経過をたどった。検察側は公訴棄却を求めていた。
控訴審の争点は(1)責任能力、(2)訴訟能力、(3)被害者の死因——などだ。
控訴審では、1審の公判前に実施された精神鑑定では認知症と診断されたが、直近の事件とされる13年12月時点では認知症はなかったとして完全責任能力を認定。公判時も症状は軽度で訴訟能力はあると判断した。
死因についても、被害者とされる男性3人はいずれも青酸化合物を飲まされたことによるものと指摘。いずれも2017年11月7日の1審判決を追認した。
弁護側は判決を不服とし、最高裁に上告した。
それでは、初公判の様子はどうだったのか。新聞・テレビはあまり大きく報じていなかったので、少し振り返ってみたい。