自前主義の呪縛にとらわれない
お客様は神様ではなく、お友達

 慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授の村上恭一氏は、こうした2つの事例に見られるネットワーク型組織を「負圧の組織」と呼ぶ。

 負圧とは壁の外部より内部の圧力が低い状態をいう。負圧のもとでは壁の外部から内部へと、いろいろなものが流れ込む。そのように外部にある経営資源を内部に引き寄せていく組織が「負圧の組織」なのだ。これらの組織は自前主義の呪縛にとらわれておらず、「自分達は多くを持たない」という前向きな思いが、価値創出の原動力となっていると、村上氏は指摘する。

 一方、今だに日本企業の多くはヒエラルキー型で、壁の外部より内部の圧力が高い「正圧の組織」だという。正圧のもとでは、壁の内部から外部へといろいろなものが流れ出ていく。豊富な経営資源を内部にため込み、その力で市場に商品を押し出していく。標準化された製品の大量生産に強い組織であることが、戦後成長期では成功要因だった。自前の生産力・開発力を中心に据えた「正圧の組織」が、究極の形状まで進化したのが、今日の多くの日本企業の姿ではないかという。

「正圧の組織」が精緻さを増すに連れて、積極的に外部の知を取り入れる姿勢も、積極的に変化を欲する姿勢も、多様性を活かすことも、どんどん弱まっていった。内向きにルーチンを回すことが主体の組織には、そのような姿勢はあまり必要ない。標準化による効率を阻害する要因となるだからだ。

 ところが現在は事業環境の変化が早くなり、顧客のニーズも多様化が進んでいる。変化と多様性のなかで次々と新たな価値を創造していくには、スピード感をもって異質な知がぶつかりあうことが求められるようになってきている。だから今日は、外部の知がどんどん流れ込んでくるような、「負圧の組織」が求められるのだ。

 図表は「正圧の組織」と、「負圧の組織」の特徴を対比したものだ。マルヤガーデンズのガーデンは、営利企業である丸屋本社が運営主体だが、そこにはNPOや市民サークルなど非営利の多様な団体が連なっている。企業サイドから見れば、「集客につながるイベント」という経営資源を、地域コミュニティの協力を持ち寄ってもらうことで調達しているともいえる。こせがれネットワークは、「農家のこせがれ」だけではない多彩なプレーヤーが自由に出入りしているから、構成員のリスト化は困難だ。「お客様は神様ではなく、お友達」は、宮治氏の好きな言葉でもある。