米国が自国にある中国の資産を凍結して、国債や証券などの売却を阻止することも考えられなくはないが、これは室町幕府が商人からの借金に苦しむ武士の救済のために、借金帳消しを布告した「徳政令」に似ている。次からは誰も金を貸さなくなるから、武士は一層苦しむことになった。

中国の成長、減速するが
巨大な国内市場は強み

 中国の輸出依存度はGDPの19%で、輸出の18%が米国向けだから、GDPの約3.4%が米国へ輸出されている。

 一方米国の輸出依存度は、輸出できる産品が少ないせいもあって、7.8%と低く、その8%が中国向けだから、対中輸出はGDPの0.6%にすぎず、貿易戦争で損害率は中国の方がはるかに高い。

 だが中国は毎年巨額の貿易黒字をあげ、対外純債権が236兆円余り(香港を加えれば379兆円)もある“健全経営”だ。

 これに対し、米国は連年巨額の赤字を出し、純債務が1076兆円も累積した極端な赤字体質だから、経済の実力では中国の方が上回っているのではないか、と考えられる。

 対米輸出に依存してきた中国企業が貿易戦争で苦境に立つことは必至だ。だが中国では年間2808万台もの車が売れ、1億4900万人余りが海外旅行をし、家の保有率は89%との統計もあるほど、中産階級が爆発的に増大し、14億人の巨大な国内市場の中核になっている。

 米国に対する貿易黒字3233億ドル(2018年)の一部が減っても、中国の全世界との貿易黒字は3517億ドルだったから、おそらく中国は、黒字を続け、国内の開発を進めて対米輸出の減少で苦境に立つ企業を救済できるだろう。

 一方、米国は高関税によって対中赤字が減るとしても、全体の貿易赤字8787億ドルが解消する可能性は低い。

 中国の成長率が昨年6.6%になったことを「28年ぶりの低水準」として、中国経済の「減速」を伝える報道が日本では一般的だが、母数が大きくなれば成長率が低下するのは自然だ。

 成長率がもしゼロになったとしても、中国で自動車が昨年2808万台も売れ、1億4900万人が海外旅行をするような繁栄が続くとすれば、重大な問題は生じそうにない。

 日本では1998年以降、成長率がマイナスになった年が5回あり、2009年はマイナス5.42%だったが、社会に大きな変動は起きなかった。

トウ小平の「近代化」
実は体制を戻すことで繁栄

 中国は1978年にトウ小平氏(トウの字は登におおざと、以下同)が実権を握って、巧みに市場経済化を進め、名目GDPは40年間で245倍に達した。活発な市場経済と「科挙」で選ばれた官僚専制の組み合わせは、中国の伝統的体制であり、効率は高い。科挙は578年に始まり、貴族の権力世襲を終わらせた。