東京23区への通勤者の減少数
出所:「テレワーク・デイズ2018実施結果報告」(総務省・経済産業省、2018年10月12日)
東京五輪・パラリンピックでは、国内外から多くの観戦者や観光客が東京を訪れる。他方、都心部は建設ラッシュが続いており、2020年までに丸の内・大手町のオフィスの7割ほどのスペースが新たに供給され、東京都心部の交通混雑が懸念されている。
その解消の切り札として注目されているのがテレワークだ。過去のロンドン大会では企業の約8割がテレワークや休暇取得などの対応をし、混雑解消に貢献したという。政府は大会の開会式が行われる7月24日を「テレワーク・デイ」に設定し、企業などにテレワークの実施を呼び掛けるなど、普及に力を入れている。
前回の「テレワーク・デイズ2018」では、7月24日前後5日間で1682団体、延べ30万人以上が参加した。その結果として、期間中、東京23区への通勤者が延べで約41万人減少したという。
特に減少量が多かったのは丸の内、品川で、丸の内では9000人以上減少(午前8時台)したという。競技会場に近接する豊洲でも減少傾向が見られた。
テレワーク・デイズは企業にとってもメリットが大きい。事務用紙等は約14%減少、残業時間も約45%減少し、消費電力削減にも効果があった。さらには、勤務者の移動時間短縮や生活環境の改善、業務の生産性向上にも貢献したのだという。
先ごろ、大手金融グループが社員の副業や兼業を認めたことが話題になったが、テレワークの普及は副業や兼業の推進にも一役買うだろう。現時点では副業・兼業を認めない企業が7~8割に達しているが、潜在的に副業・兼業を希望している人が2200万人いるという。経済的理由だけではなく、技術の習得や知識・経験の蓄積、人脈拡大などの理由もあり、このような人材は企業にとっても新規ビジネス開発に不可欠だ。
今年も7月22日から9月6日まで「テレワーク・デイズ2019」が開催される。これを機に、テレワークのメリットが広く知られるようになり、東京五輪・パラリンピックが、混雑のトラブルなく開催されることを期待したい。
(富士通総研 経済研究所 主席研究員 榎並利博)