化学サバイバル!#24三井化学の社長に就任する市村彰常務(左)と再編特命会長となる橋本修社長(三井化学提供)

三井化学は2月上旬、橋本修社長の後任に市村彰浩常務執行役員を充てるトップ人事を発表した。今回のトップ人事は単なる世代交代ではない。橋本氏を会長に、市村氏を社長に据える布陣の裏には、足元で加速する石油化学再編を次の段階へ進める意図が透けて見える。特集『化学サバイバル!』の本稿では、三井化学の「ツートップ」体制の狙いを明らかにし、今後の業界再編の行方を占う。(ダイヤモンド編集部 金山隆一)

三井化学で6年ぶりの社長交代
ツートップ体制で内外の再編狙う?

 三井化学が2月5日に発表した橋本修社長の後任に市村彰浩常務執行役員を充てるトップ人事は、石油化学業界の関係者に衝撃を広げた。2020年に社長に就いた橋本氏はモビリティ、ICT、ヘルスケアの3領域を成長の柱に据え、汎用石油化学事業では、大胆な構造改革を進めてきた。

 石化改革では、不採算事業の整理や大型投資の選別を進め、事業ポートフォリオの新陳代謝を加速した。とりわけ、今年に入ってからは、西日本での地域をまたいだエチレン設備の再編に道筋を付け、長年「議論止まり」だった国内再編を実行段階に進めた。

 橋本氏は同日に開かれた記者会見で、在任中に同社を「五流から三流へ引き上げた」と表現した。収益体質や財務基盤の改善、成長領域の収益拡大など土台づくりは進んだが、石化再編という「本丸」はこれから本番を迎える。

 みずほ証券の山田幹也シニアアナリストも「想定より社長交代は早い」と語る。27年に石油化学事業を分社化する計画を念頭に「橋本体制はあと2年続く可能性もあると思っていた」(山田氏)という。橋本氏の続投観測は根強く、関係者がサプライズ人事と受け止めたのはそのためだ。

 トップ人事の中身を精査すると、狙いは単純な世代交代ではない。橋本氏は代表権を持つ会長に就任し、さらに石油化学事業を含む「再編の特命担当」という具体的な役割を担うことになる。一方で、市村氏はCEOとして経営執行の全権を担う立場となる。橋本氏は会見で自身の立場について「CEO的役割は全く考えていない」と打ち明けた。

 肩書を見れば権限の移譲のようだが、今回の人事で見えてくるのは、役割分担型のツートップ体制の構築だ。では何のためのツートップなのか。実は、橋本氏も市村氏も担うのは再編だ。ただし、橋本氏が担うのは「業界(社外)」の再編であり、市村氏は「社内」の再編といえる。どういうことか。次ページで解説していく。