中国の巨大な介護・高齢者市場には、日本の企業も相次いで参入している。介護は生活に密接し、極めて属人的な要素が強いサービス分野。日本の介護、日本企業が本当に成功できるのか。上海市で開催された中国最大級の介護ビジネス展示会、現地の介護関係者らを取材してみた。(ダイヤモンド編集部 山本猛嗣)
中国最大級の介護・福祉展示会が
注目される理由
6月11日、中国・上海市――。「とにかく広い展示会場」として世界的に知られる上海新国際博覧中心の展示ホールのゲートが開くと、待ち受けていた大勢の人々がドッと流れ込み、会場内はあっという間に人混みであふれた。その展示会は「CHINA AID(チャイナ・エイド)」。
まるで「チャリティー・コンサート」を想像させる名称だが、もちろん違う。日本語表記では「中国国際福祉機器展」(上海市民政局主催、上海国展展覧中心有限公司運営)。年に1度、開催される中国最大級の介護・福祉関係の展示会である。
中国政府が力を入れる成長産業といえば、IT産業や自動車産業などが有名だ。しかし目立たないが、有力視されている産業がある。それが「養老産業」といわれる介護・高齢者向け産業である。
現在、中国は長年続いた「一人っ子政策」の反動により、猛烈な勢いで少子高齢者化が進んでいる。2018年末、中国の60歳以上の高齢者人口は2億4900万人を超え、2050年前後には5億人規模に達すると見込まれている。その市場規模は、試算する行政機関やシンクタンクによってさまざまだが、現在の潜在的規模で80兆~150兆円、20~30年後には300兆~500兆円規模と予測されている(ちなみに、日本の人口は約1億3000万人、うち65歳以上の高齢者は約3500万人)。
チャイナ・エイドは、現在、中国の介護ビジネス関係者の間では、「絶対に視察すべき展示会」といわれる。その理由は、2つ。
1つは多くの有力な介護ビジネス関係者が一堂に会するため、「最新の情報交換が可能」であるということ。もう1つは、年々、目まぐるしく変わる介護ビジネス環境の中で、「毎年、展示内容や話題のテーマを見れば、大きな流れや方向性がわかる」(日系企業の出展者)からだ。