2017年に『借りたら返すな!』を出版し、財務状態や融資環境がいい時にできる限りの借入を行うことの重要性を説いた大久保圭太氏。一方、2019年に『社長! カネ回りをよくしたければ銀行の言いなりはやめなさい』を出版し、ムダな借金を減らして自己資本を強化することが会社を強くすると説いた古山喜章氏。
いずれも財務戦略のプロフェッショナルであるお二人の意見は、正反対のように見えます。借入はするべきかするべきではないのか、銀行との付き合いはどうすればいいのか、儲かる会社に変わるためにはどうすればいいのか……中小企業の財務戦略を軸に、お二人に激論をたたかわせていただきました。前後編2回に分けてお届けします。(取材・文/平行男、撮影/熊谷章)

税理士は相続の専門家ではない

古山喜章(ふるやま・よしあき)
アイ・シー・オーコンサルティング代表取締役社長
1965年、大阪市生まれ。1989年、関西大学卒業後、中堅菓子製造販売会社に就職。急成長するなかで、経理、総務、人事、購買、システム、生産現場改善など、あらゆる管理部門業務に転換に着手する。2006年、アイ・シー・オーコンサルティングに参加。クライアントの財務改善、人材開発、システム改善などに注力する傍ら、資金繰りの要となる銀行交渉の実態を深耕し、指導を重ねる。2011年より「後継社長塾」(日本経営合理化協会)の副塾長を務める。中小企業の後継者育成とともに、事業継承の問題解決に数多く携わる。2014年、同社の代表取締役就任

大久保 まず自己紹介しますと、私は以前、会計事務所、コンサルティング会社に勤務して、企業に対する財務アドバイザリーや企業再生、M&A業務に従事していました。その後独立して2011年に税理士法人とコンサルティング会社を立ち上げ、現在は成長企業に対する財務コンサルティングを行っています。

古山 私は中堅菓子メーカーに就職し、経理、総務、システムなどの管理部門業務に携わった後、現在代表を務めているコンサルティング会社に入社しました。クライアントの財務改善、人材開発、システム改善などをサポートしつつ、銀行交渉の指導もしています。2011年からは中小企業の後継者育成問題の解決に力を入れてきました。

大久保 古山さんの本を拝読しましたが、私の意見と一致するところも多いです。でも、ちょっと違うところもありました。まず意見が一致するところとしては、会社の顧問税理士に問題があると考えているところです。

古山 税理士は、会社の財務や相続については詳しくないんです。税理士の試験を受けるときに、必須科目以外の選択科目がありますよね。相続税法、消費税法または酒税法、国税徴収法、住民税または事業税、固定資産税、このなかから2つ受かればいいという。そのときに相続税法を選ぶ人は少ないでしょう?

大久保 そうですね。相続税法は難しいですから。

古山 だから相続に詳しい税理士って少ないんです。それなのに経営者は、事業承継や相続の問題が発生すると、税理士に相談してしまう。相談相手を間違えていると思います。相続だけでなく、財務のことを知らない税理士も多いです。

大久保 税理士の試験に財務に関する科目はありませんから、財務に詳しくなくても税理士になれてしまいます。しかも試験の際には、国税局の通達を覚えないと合格できないから、合格すると国税局寄りの意見をもった税理士になってしまうことも多いんです。