P/L脳なので銀行借入のアドバイスはできない

「借りたら返すな!」「ムダな借金はするな!」<br />中小企業の財務戦略、どっちが正しい?<br />(前編)大久保圭太(おおくぼ・けいた)
Colorz国際税理士法人代表社員。税理士
早稲田大学卒業後、会計事務所を経て旧中央青山PwCコンサルティング(現みらいコンサルティング)に入社。中堅中小企業から上場企業まで幅広い企業に対する財務アドバイザリー・企業再生業務・M&A業務に従事。再生業務において、過去節税のために生命保険に加入した経営者が、業績悪化とともに借入等が返済できなくなり、保険金欲しさに自殺するのを間近にみて、自分の無力さに悩む。税理士の適切でないアドバイスにより会社の財務が毀損し、苦しんでいる経営者が多数いる現実を変えるには、税理士業界の意識を変える必要があることを痛感。2011年に独立し、再生案件にならないような堅実な財務コンサルティングを中心に、代表として年間数十社に及ぶプロジェクトを統括している。著書に、『財務諸表は三角でわかる 数字の読めない社長の定番質問に答えた財務の基本と実践』(ダイヤモンド社)がある。

古山 財務の要である銀行借入についても、税理士はよくわかっていないんですよね。借入においては、P/L(損益計算書)よりもB/S(貸借対照表)を意識することが重要です。しかし、税理士はP/L脳になっていますから、B/S脳で考えて提案できません。

大久保 私の税理士法人では銀行借入しています。先輩の税理士には「そんなことするな」って怒られます。

古山 税理士が資金調達する例は珍しいですよ! 毎月の顧問料という安定した収入源があるし、投資の必要はあまりないですからね。

大久保 でも、何事も経験しないと。銀行借入したこともないのに経営者にアドバイスできませんから。

古山 おっしゃる通りです。銀行借入について、ほとんどの税理士がよくわかっていない。それでも経営者は、付き合いの長い税理士を信用してしまうんですよね。そして高齢の社長が経営している会社では、顧問税理士を社長の高校の同級生が務めていたりする。だから頭が固いし、変えられない。困ったものです。

大久保 そこは若い税理士にとってはチャンスです。経営者の相談に乗ると、多くの人が税理士に対して不満を持っているんです。特に、親が創業者の場合、その息子である二代目は、税理士を変えたい。でも社長はそれを許さない。二代目に社長が替わるというタイミングで、顧問契約を結ぶケースは多いですね。