事業承継に悩み、出口戦略を描けない、高齢の経営者

大久保 ところで古山さんのクライアントは、どんな方が多いんでしょうか?

古山 私の顧問先は、長年経営に携わってきた、60代~80代のベテラン経営者が多いです。

大久保 私のお客さんは、成長企業、ベンチャー企業の20代~40代の経営者が多いです。客層が全く違いますね。

古山 私のお客さんにはバブルの頃を知る経営者が多いです。あの頃、お金は銀行に頭を下げて貸してもらうものでした。その記憶が染みついているので、現在は正反対の環境にあるということが理解できません。「借入するのに担保も保証人もいらない」と説明しても信じてもらえないし、「銀行には交渉しなさい」と言っても「とんでもない!」という感じ。

大久保 バブルの頃を知らない若い世代の経営者は、借入に積極的ですよ。早く会社を成長させて、大手に売却するとかIPOなどの出口戦略を描いている人がほとんどだからです。

 高齢の経営者は、後継者はいないし、M&Aなどの出口戦略も考えていないという人が多いですね。もちろん顧問税理士だって、事業承継やM&Aには詳しくない。そうなると、出口を考えずに自分も会社も年老いていくことになってしまいます。

古山 そうです。私のところに相談に来るきっかけも、ほとんどが事業承継です。それで財務を見せてもらうと、それどころじゃないとビックリする。もうちょっと、安心して後継者に渡せるような財務にしておかないと、とアドバイスするわけです。特に銀行から借りすぎているのが一番怖い状況です。

大久保 私が以前企業再生に関わっていたときも、なんでこんなに借りたの? と驚いたケースはよくありました。

古山 たとえば、借入金の総額が年間の売上よりも多い企業があります。普通に考えたら自力で返済することは難しいです。

 こんな会社があるのはリーマンショック後のモラトリアム法(中小企業金融円滑化法)が施行されたことで、銀行が格付けの悪い会社にもどんどん貸してきたからです。でも、いよいよダメになったら彼らは引き上げます。つまり会社は、生命維持装置のスイッチを銀行に握られている状態です。そこに気づかずに、「俺の顔で借りられている」なんておっしゃる経営者もいますけどね。