省令案には、この他にも「管理」の義務化につながる内容が多数含まれている。責任者は、管理を求められる以上、入所者の部屋に勝手に入り込む必要が発生する。しかし入所者が、自分自身の鍵などで自分のプライバシーを守ることは、省令案では実質的に考慮されていない。

 また金銭管理も、本人と事業者の同意があれば、事業者が行えることとなっている。成年後見の場合、裁判所や医師による判断が必要となる。しかし無料低額宿泊事業なら、そのような手順を踏まずに、事業者が入所者の金銭管理をできてしまう。

 社会運動家の大西連氏(認定NPO法人 自立生活サポートセンター・もやい)は、「全体として、施設運営者の都合に合わせていると思われます。その一方で、入居者の権利や尊厳のある生活の保障は配慮されていないと思われます」と語る。

「脱施設化」の流れのなかで
「施設化」にこだわる厚労省

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 今、特別なニーズを持ち支援を必要とする人々に対する世界の流れは、「脱施設化」である。施設に居住させると、その人々は自動的に一般社会から隔離され、排除されることになる。「施設は、施設であるというだけで悪」というのが、世界の共通認識だ。

 ちなみに、日本では施設とみなされていない「グループホーム」は、世界の常識では小規模施設であり、なくすべきものだ。しかし厚労省が推進しようとしているのは「脱施設化」ではなく「反・脱施設化」と呼ぶべきものであろう。

 とりあえず、この省令案に対しては、本記事公開日の翌日にあたる7月6日(土)まで、パブリックコメントを提出することができる。「通常のアパートでも貧乏人が住んだら無料低額宿泊所だなんて、なんだかおかしいと思います。再度の検討を」「生活困窮者になったとき、部屋の中も小遣いも管理される小中学生のような扱いを受けるのはイヤです。この省令案は廃止してください」といった一言でも有効だ。私も、やれることはやってみようと思う。

【参考】 パブリックコメント募集ページ(省令案もあり)

(フリーランス・ライター みわよしこ)