1つは、「なんのために存在する会社、組織なのか」「それによって社会や顧客、社員に何をもたらせるのか」といった企業の存在意義を明確にするだけではなく、「企業理念に基づけば、自分の日々の仕事においては、どのような考え方や行動が評価されるのか」といった組織の運営方針にしっかりとかみ砕いて伝えること。

 逆の言い方をすれば、普段の業務や行動にかみ砕きにくい、抽象的な企業理念であれば、伝え方を変えなくては、社員としては、白けてしまい逆効果になるだけです。日常の業務の中で企業の価値観を感じることができてはじめて、社員の行動や仕事が変わってきます。

 もう1つは、社員の変化を企業側が認知することです。表彰制度やコンテスト形式などを通し、価値観に沿った社員の行動を積極的に取り上げて他の社員へ伝播することで、企業全体に価値観への共感を広げることができます。

理念と日々の業務をつなげて
共感を生んだオムロンの「TOGA」

 ここで、オムロンにおける組織開発の取り組みを紹介します。オムロンは、企業理念を大切にして、グローバルに浸透させている企業の1つです。それは、単に理念を理解してもらおうとする取り組みではありません。社員の日々の仕事と理念をうまく紐づけ、業務を遂行するなかで、自然と社員が同じ方向に進めるような工夫がされているのです。

 オムロンは、制御機器事業、電子部品事業、車載事業、社会システム事業、ヘルスケア事業、そして環境事業などを中心として、さまざまな製品やサービスを展開。海外進出も早くから進めており、海外売上高比率は60%に、海外社員比率は70%に迫る勢いで拡大を続けています。

 このように社員の多様化が進む中で、オムロンが企業の価値観をあらためて浸透させるための試みとして2012年に新たに立ち上げたのが、TOGA(The Omron Global Awards)という社内表彰制度です。

 社内表彰というと、営業成績が良かった社員や、高い成果を上げたチームなどを表彰するものと思いがちですが、TOGAはそういうものではなく、「理念実践にチャレンジし続ける風土」の醸成を狙い、1年かけて理念実践を行った優秀事例を表彰するものです。