“校舎も講義もないのに、ハーバードを超える人材が集まる”と話題のミネルバ大学。そのミネルバ大学の日本での認知活動に携わり、『世界のエリートが今一番入りたい大学ミネルバ』を著した山本秀樹氏は、活動を通して多くの優れた教育者と出会い、新しい時代の「教育」を目指す「新しい学校」について見聞きしたという。今回は、その中から、「世界最先端の教育機関」を6つ選んでいただき、前後編でご紹介する。後編は、深い国際・異文化体験を提供する3つの学校だ。

THINK Global SchoolのHPより

「世界が学び舎」の旅する高校
THINK Global Schoolの何がすごいのか?

前編でご紹介した学校が「最新のテクノロジーや科学技術を学ぶ」ことに注力しているのに対し、最新の情報技術を活かして、従来にないプログラムを提供しているのが、深い国際・異文化体験を提供する学校だ。

2014年に設立されたTHINK Global Schoolはその名のとおり「世界が学び舎」の高校だ。ミネルバ大学は4年間で7か国に居住するが、この高校は1年間に4か国を旅して、各国に約2か月滞在しながらその国の歴史、社会、政治などをテーマにしたプロジェクト学習を実施する。たとえば、2019年度の2年生が日本で取り組むテーマは「電力供給方法の最適化」だ。学生はNPO、電力会社、一般市民の3つのグループに分かれ、それぞれの立場から日本の電力供給源(原子力・火力・水力・太陽光・風力など)の最適化について探究する。8週間のプロジェクトの最後には、日本の地方自治体職員とNGOに対して、探究結果に基づく提言を行う、という内容だ。

プロジェクト学習以外にも滞在地での提携先であるホスト校の施設を使い、理科の実験などを行う。学生は1学年40名。教師は約10名で学生の旅に同行する。米国のWASC(Western Association of Schools and Colleges)の加盟校で同校を卒業すると米国大学をはじめ、世界の主要大学で学べる卒業資格が得られる。

2017年に最初の卒業生が生まれたが、新設校ながら、オックスフォード大学やハーバード大学に合格者を輩出している。開校当時は国際バカロレアコースも開講していたが、現在はより制約の少ない独自カリキュラムに絞っている。ちなみに国際バカロレアプログラムを採用していた時の学校平均点は36点で、採用校全体の平均である30点を大きく上回っていた。

学費は8.55万ドル(約940万円)だが、実際には家計の財務状況に応じて学費が決まる仕組み(Need based Tuition)を採用しており、同校のウェブサイトで試算できる。あくまで目安に過ぎないが、日本の50代の年収の中央値500−560万円をモデルに300万円ほどの貯蓄を持っているベースで算出した結果、実際に支払う学費は1.42〜2.13万ドル(約156万〜236万円)となった。*1

多くのインターナショナル・スクールは、国際性と多様性をうたいながら、実際には同じような事情でその国に滞在している富裕層の子どもで構成されているのに対し、THINK Global Schoolは独自に設立した財団からの寄付金により、多様な所得階層からのアクセスを可能にしている。入学試験は学力だけでなく、志望動機や自分の学習計画の提出、入学審査官と実際に教わる教員の2回の面接を経て決まる。

*1 同校のウェブサイトにて試算。これが正式なオファーではなく、実際には合格後により詳細な計算に基づく金額がオファーされるとのこと。