生え抜き選手を育てながら
補強も並行させる方向へ

「他チームからの移籍で選手を補強することもある程度は視野に入れていかないと、チーム作りが間に合わない時代になってきた。10年のスパンどころか、3年ないし4年しか在籍しないことを前提にチームを作らないといけないのが、ここ数年の日本サッカー界全体の潮流。ウチに限らず、チームが強くなり切る前に主軸が抜けることでチーム作りの頓挫を余儀なくされる流れが、レベルが拮抗している今現在のJ1の状況を生み出していると思っているので」

 生え抜きを育てながら、補強も並行させる方向へ舵を切った鈴木強化部長はスカウトを増員させ、J1やJ2を視察させた。一方で外国人選手は海外市場だと年俸が高騰しているので、他のJクラブで活躍し、日本のサッカーや生活にも慣れて計算が立つ選手をターゲットにすえた。

 2017シーズンにアルビレックス新潟から加入し、今シーズンも変わらぬ存在感を放つ33歳のブラジル人ボランチ、レオ・シルバはその象徴だ。もっとも、それでもジレンマを拭うことはできず、最終的には「ちょっと吹っ切れました」と鈴木部長は苦笑いしたことがある。

「移籍といっても、バリバリの日本代表クラスの選手を獲得することはやはり避けたい。培ってきたアントラーズのカラーというものがあるし、周囲からも『アントラーズらしい』という言われ方をよくされる。今ではアントラーズの強みになっている感があるし、僕たちとしてもそうした伝統はこれからも大事にしていきたいので」

 アントラーズらしさとは、黎明期の土台を作った神様ジーコが伝授した、敗北の二文字を心の底から拒絶する勝者のメンタリティーにある。確固たるアイデンティティーがあるからこそ、新卒組や移籍組を問わず、選手たちが憧憬の視線を送る。血の入れ替えを最小限にとどめながら歴史と伝統を紡いでいく作業を、鈴木強化部長はこう説明したことがある。