かつてアメリカと日本でソフトウェア産業の明暗を分けたのも、グーグルに出戻りが多いのも、根底には同じ問題があると僕は考える。それは変化に強い組織かどうかを見極めるバロメーターにもなり得るかもしれない。連載の最終回、個人も組織も変化にめっぽう強くなる「働き方」について考えたい。(freee株式会社CEO 佐々木大輔)
グーグルにはなぜ
「出戻り」が多いのか
もと居た会社に戻る、それも抵抗なく――。とりわけ日本のドメスティックな組織では、こうしたケースはかなり少数派なのではないだろうか。でも、グーグルでは頻繁にあった。転職したあと、グーグルを出たときよりも上の役職で戻ってくる。そんなことも珍しくなかった。
僕のグーグル時代の同僚であり、友人の清水一浩もその1人だ。グーグルからからフィンテックのスタートアップに転職した後、グーグルに出戻り、さらにその後フィンテックのスタートアップに転職し、またグーグルに出戻った。グーグルでの知見をスタートアップで生かし、スタートアップの知見をグーグルに生かしている。
こうした「出戻り」がグーグルに多いワケは、2つあると僕は考えている。
・そもそも、組織と個人が主従関係のある「雇用」ではなく、対等な「パートナーシップ」で結ばれているから
・それゆえに、組織も社員も変化に敏感で、組織の新陳代謝がいいから
たとえば、主従関係で結ばれている安定した雇用の場合、基本的にはみんな会社の言うことを聞くし、嫌なことがあったからといってすぐに会社を辞めるケースは少ない。
ただ、組織のビジネスモデルが停滞していたとしても、社員の反応はそのビジネスの揺らぎや変化に対してきっと鈍い。気づかないというより、無関心に近い。「うちの会社、大丈夫かな?でもまあ、何とかしてくれるでしょ」といった反応が大多数ではないだろうか。どこか他人事なのだ。その時点で会社を辞める人はほとんどいないから、揺らいでしまっているビジネスモデルにフィットしている人材は当然減らない。