清水の井上社長は「進取の精神でいく」と母校である早稲田大学の建学の精神の言葉を借りて、「洋上風力のリーダーシップを取りたい」と意気込む。「間違いなく育つ市場で、ビジネスチャンスを前に指をくわえて見ているわけにはいかない」と事業拡大にやる気満々だ。

 業界関係者の中には、「あんなに大きな船を作って大丈夫か」と首をかしげる者も少なくない。国内で大型の風力発電施設の建設需要が続くか不透明であり、インフラやサプライチェーンなど市場も未成熟。プロジェクトの発足から発電開始までの時間も長い上、莫大なコストもかかる。「決して甘い事業ではないので覚悟が必要」との声がエネルギー業界からも聞こえる。

 もっとも、清水は井上社長が「発電事業者にもなり得る」と発言した通り、建設だけで終わるつもりもなければ、国内にとどまるつもりもない。

 施工の発注を待つだけでは、プロジェクトが途絶えた時に稼げない。だから、施工の請負と事業者の両輪を狙う。これには、技術開発や研究に長けたゼネコン特有のメリットも働く。

 建設前の環境調査を依頼されることがあり、「実は事業主以上にリスクや採算性が分かる」(清水建設エンジニアリング事業本部長の関口猛執行役員)。つまり、効率の良いプロジェクトかどうかの選別をいち早くすることができるというのだ。さらに将来は、東南アジアや台湾など海外で工事の受注も狙う。

 足元で国内建設事業は追い風だ。しかしこの風はいずれ弱まるだろうし、風向きが変わるかもしれない。だから基盤の建設事業以外の分野で稼ぎ頭を増やすべく、業界は事業多角化を進める流れにある。洋上風力発電は多角化材料の目玉の一つとなっており、スーパーゼネコンでは鹿島や大成建設もSEP船の建造こそ予定はしていないが、洋上風力発電の技術開発や計画は進めている。

 建設事業や不動産開発事業など「陸」で培った経験が「海」でも活かせるのか。洋上風力発電は建設頼み、国内頼みから脱却できるか否かの鍵を握る。

(ダイヤモンド編集部 松野友美)