◎教え3
溺れる者は藁(わら)をもつかむ

 では、溺れている人を救助するにはどうしたらいいのか。

「その時は、ロープか、何か浮くものを投げてやれ。海水浴場なら浮き輪があるだろう。なければペットボトルや板きれ。ビーチボール。空のランドセルでもいい。溺れる者は藁をもつかむから、必死にしがみついてくれるだろう。ひとまず落ち着いたら、後は陸地までひっぱってやれ。

 投げてやるものがなくて、周囲に協力してくれる人もいない場合は、かわいそうだが動かなくなるまで待って救出し、蘇生させること。そのために、人工呼吸と心臓マッサージは、子どもの頃から覚えておかなければならない」

◎教え4
褌(ふんどし)礼賛

 ちなみにオヤジさんは、スイムウェアと救助用品を兼ねて、海水浴時には「赤いふんどし(通称赤ふん)」を着用しており、浜の子どもたちの間では「赤ふんのおじちゃん」と呼ばれていた。

「赤ふんは便利だぞ、溺れている人がいたらすぐ、投げてやれるからな。俺はこれで、3人の生命を救ってやったことがある」が自慢だった(現在の男性が着用するのはかなりハードルが高いと思われるが…)。

◎教え5
鼻と口さえ沈まなければ死なない

 パニックというのは不思議なもので、たとえ泳ぎが得意な者でも、死の恐怖にさらされた瞬間、普段通りには体が動かなくなる。そんなとき、気持ちを落ち着かせて、窮地を脱することができるよう、次のように教えられた。

「足がつったり、疲れて泳げなくなったりしたら、体の力を抜いて上を見ろ。人間は体の2%ぐらいは自然と浮くようにできているらしい。鼻と口さえ水面に出ていれば呼吸ができるから死なない。生きていれば、必ず助かる道は開ける。諦めないで、浮いて待て」

 実際、体の力を抜き、上をむいて大の字になると、体はぷかりと浮く。かつて教わった方法を試みたトモキさんは、大海原に抱かれているような心地よさを感じ、危く昼寝しそうになったこともあるという。