6月24日に行われた長門正貢・日本郵政社長の記者会見で「守るべきルールが順守されず、高齢者取引の4割で違反があった」と明らかにされた。

 ゆうちょ銀行の担当役員は「70歳以上の高齢者に投資信託を販売する時は、お客に理解力があるか上司が確認する決まりになっているが、直営店の9割でルールが無視されていた」と違反を認め、頭を下げた。

 投資信託は、かんぽの扱う生命保険より、さらに複雑な金融商品だ。ゆうちょ銀行の直営店でさえ9割に違反があったのなら、取り扱いを依頼されている日本郵便、つまり郵便局ではどうなっているのか。

 金融の門外漢である郵便局員がノルマに追われ、投資信託を売っている現場で、ひどいことが起きてはいないのか。

 不祥事の徹底解明を言いながら、第三者委員会は投信販売にメスを入れないのは理由があるようだ。踏み込めば、郵政民営化という十字架を背負う経営陣の責任がより明確になる。

 市場原理になじまない全国一律の郵便事業を抱え、金融商品を売ってもうけなければ、民営化は立ち行かない。その結果、郵便局に過剰なノルマ販売などを強いて、老人を食い物にする「不正」を増殖させた構造が明らかになってしまう。

根源は「民営化」
赤字の郵便支える必要

 郵政民営化とは、国の事業だった郵便、貯金、簡易保険を株式会社にして、誰もが株を買えるよう市場に公開することだった。

 小泉・竹中改革の看板政策だったが、自民党内でも「過疎地にも出店を義務付ける郵便事業は市場原理になじまない」「日本最大の貯蓄を抱える郵貯を外資に差し出す政策だ」などと侃々諤々(かんかんがくがく)の論議を呼んだ。

 紆余曲折の末、郵政は4分割され、持ち株会社の日本郵政の下に、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命が並ぶ体制になった。

 懸案の上場は「親子上場」という特異な形が取られた。

 銀行を見れば、メガバンクは金融グループを統括する持ち株会社だけが上場している。郵政グループは、持ち株会社の日本郵政だけでなく、ゆうちょ銀行もかんぽ生命も株を公開した。例外は郵便局を抱える日本郵便だ。

 従業員19万4000人(臨時従業員含まず)を抱え、郵政グループでは圧倒的な存在感を持ちながら収益性が期待できないので上場は無理、と判断された。

 だが日本郵便が赤字に陥れば、親会社である日本郵政の株価に反映する。郵便局の働きぶりが郵政株の売り出しに影響し、民営化の成否にもつながる。