なぜソクラテスは死刑になったか?

 その頃って科学も発展してない時代だから、象が世界を支えてるとか、変な先入観で迷信や宗教を頑固に妄信してる人たちばかりだと思っていたけど、「価値観なんて人それぞれだよ」という現代的な視点が、そんな時代からもうあったのか。

「一方、それに対立するのが、絶対主義だ。これは、相対主義の逆で『絶対的に正しい、絶対的に善い、といったものが、ちゃんとこの世には存在するんだよ』という考え方のことである。この主義を唱えたのが、かの有名なソクラテスだ」

 ソクラテス。
 哲学の知識はゼロの僕でも、名前くらいは知っている。哲学者といえば、という連想で、一番最初に名前が出てくる人だよな。

「そのソクラテスが生きていた当時、世の中は相対主義が優勢だった。つまり『正義なんて国や人によって変わるのだから絶対的に正しいものなんてない』という考え方が流行っていた時代だったというわけだ」

「そこへソクラテスがやってきて、『いやいや、絶対的な正しさ、正義は存在するのだ』と強く訴えかけ、人々に『善く生きる』ことを勧める。これは端的に言えば『正義を志して生きろ』ということであるが、当時の風潮からすれば、少々暑苦しい説教話であり、結局、権力者たちから疎まれたソクラテスは無実の罪で投獄され、最終的には死刑となってしまう」

 死刑……。善い行いをしろと言ったら、人から嫌われて死刑か。なんだか身につまされる話だな……。

次回に続く