地方の労働者が豊かになる可能性はあるが
地方の生活者は困惑する

「最低賃金が上がると地方の労働者が豊かになる」可能性はある。最低賃金が10%上がり、地方の時給が10%上がり、地方の求人が5%減ったとすれば、地方の労働者の総所得は5%増えることになるからだ。

 しかし、それが地方にとって良いことなのか否かは、何ともいえない。採算割れした小売店が閉店してしまい、買い物難民が増えれば、それは地方の生活者にとって大いに困惑する事態だからである。

 まして、最低賃金が5%上がり、地方の時給が5%上がり、地方の求人が10%減ったとすれば、地方の労働者の総所得は5%減ることになり、目も当てられない。

最低賃金の引き上げで
労働生産性が上がる可能性はあるが

「最低賃金を引き上げると労働生産性が上がる」という人がいる。その理由の第一は、労働生産性の低い企業から労働生産性の高い企業へと労働者が移動するからである。

 一般論として、それは経済にとって望ましいが、地方から大都会への労働力の移動であれば、上記のような問題を引き起こしかねないので、喜ぶべきとは言い切れない。

 最低賃金が上がると企業が省力化投資等に注力するので、労働生産性が上がる可能性もあろう。しかし、これも大都会の話かもしれない。大都会の飲食店は自動食器洗い機を購入するインセンティブを持ちやすいが、そもそも来店客の少ない地方の飲食店では、アルバイトを自動食器洗い機に置き換えるよりも閉店を選ぶ店も多そうだからである。

 問題は、地方の人々が全国一律の最低賃金を希望していることである。直感的には、最低賃金の低い地域の人は全国一律を望むのであろう。しかし、経済の世界は複雑なので、直感に頼っていると結果的には自分が不利益を被るかもしれない。最低賃金の問題は、慎重に考える必要がありそうだ。