次々に破たんしていく「理想」
「世界の理想」とされてきた北欧も例外ではありません。
北欧といえば、充実した福祉政策のおかげで、高齢者も、女性も、子どもも、若者も、みんなが満ち足りた生活を送っている。ヨーロッパの他国で見られるような貧困や格差の問題もほとんどなく、世界幸福度ランキングでは常に上位をキープ。そうしたイメージを抱いている人が大多数ではないでしょうか。
以前参加したスウェーデンの学会で、ある学者がこんな話をしてくれました。彼女が日本の引きこもりの若者の話をしたところ、北欧の学者たちは次のように断言したとか。「私たちの国では18歳で親元を離れるのが一般的。引きこもりなんてありえない」と。
けれど、学会の後に、一人の女性の学者がそっと近寄ってきてこうささやいたそうです。「実は、私の息子は引きこもりなんです」。彼女いわく「息子はネットやアニメに夢中になって部屋にこもりきり。自立どころじゃない」とか。
実際にスウェーデンの若年層(15~24歳)の失業率は25%超で、同国の全世代平均の3倍以上にのぼります。彼だけが特別な存在ではなさそうです。福祉を支えるための重い税負担が労働意欲の低下を招き、知識労働を担っている人材の国外流出が止まらないともいわれる。そんな負の側面がいろいろと出てきています。
かたや、自由競争と自己責任を柱とするアメリカ式自由主義経済も旗色が悪い。では日本スタイルはどうか。というと、これまたダメ。目下、社会保障と税の一体改革が進められていますが、政局のゴタゴタばかりが目立っています。
こうして見ても、やっぱりどこも「うまくいっていない」