「怒る」と「叱る」の違いを
著書で語っていた曹監督

 京都府で在日韓国人三世として生まれ育った50歳の曹監督は、京都府立洛北高校から早稲田大学へ進学。卒業後は日立製作所(現レイソル)やレッズ、ヴィッセル神戸でプレーし、川崎フロンターレのアシスタントコーチに就任した2000年から指導者の道を歩み始めた。

 フロンターレのジュニアユース監督、セレッソのコーチをへて2005年にベルマーレ入り。U-15及びU-18の監督、トップチームコーチをへて2012年から監督を務め、長くJ2に甘んじてきたベルマーレを3度のJ1昇格、そして2度のJ1残留に導いてきた。

 今シーズンも第22節を終えた段階で11位につけるなど、クラブ史上初の3年連続のJ1残留へ向けて視界は良好となっている。そして、20年目を迎えた指導者人生で、曹監督が座右のとして大切にしてきた造語がある。それはことわざをアレンジした「一期一真剣」となる。

 もしかすると二度と会えないかもしれない、という思いの中で人との出会いを大切にする一期一会の一部を変えた意図を、昨年2月に発表した著書『育成主義 選手を育てて結果を出すプロサッカー監督の行動哲学』(株式会社カンゼン刊)の中で曹監督はこう記している。

<いろいろなものに導かれて僕と選手たちは同じクラブの一員となる。1年後には一部の選手と別れ、新たな出会いが訪れるサイクルの中で、難しい仕事かもしれないけれども、1年間という時間を所属した全員にとって充実したものにしていってあげたい。

 公式戦のベンチに入れる人数が18人と決まっている以上は、当然ながらピッチに立てない選手も出てくる。それでも全員が日々の練習で身心ともに充実しながらサッカーに向き合えれば、試合に出る、出ないという状況に対する選手たちの受け止め方も違ったものになってくるのではないか>

 そして、出会ったすべての選手を分け隔てなく愛することから「一期一真剣」を実践していく。資金的にも戦力的にも決して恵まれているとはいえないベルマーレを、Jリーグでも異彩を放つハードワーク軍団へ変貌させてきた日々で、曹監督は「怒る」と「叱る」の間に明確な一線を引いてきた。