──ヤフーの傘下で、ロハコ事業を成長させた方がよいとの見方もあるのではないでしょうか。

 いいえ。もはやヤフーと一緒にいることがアスクルの企業価値にとってよいという結論にはなりません。ヤフーの連結子会社でいることの最大の問題点は、ヤフーもアスクルもeコマース(電子商取引、EC)をやっていることです。結果、ヤフーのECにとってはよいことでも、それがアスクルにとってはそうではないという利益相反が生まれることがはっきりした。

 例えば、ECでアマゾンや楽天を追い抜くという目標を立てているヤフーは、赤字を拡大してでも流通総額をどんどん増やしたいが、われわれは赤字を拡大して規模を大きくしていく戦略を取り得ない。

 仮にECを巨大グループの中の一つのコストセンターとして位置付けるなら、赤字を出して流通総額を拡大する戦略は有効かもしれませんが、上場企業であるわれわれが、赤字を出して規模を大きくするなんてあり得ないわけです。

──ヤフーがアスクルのロハコ事業の流通総額を一気に増やそうとするなら、アスクルを完全子会社化するしかないと。

 契約では、ヤフーがアスクルの株を買い増すには両社の合意が必要ですから、そんなことは想定もしていません。先方がどう考えるかは計り知れないが、われわれとしてはそんなことはできない話だと思っています。

──ヤフーはロハコ事業の92億円の赤字を「由々しきこと」としているが、その移管は「考えていない」としている。彼らのそもそもの狙いは何ですか

 ヤフーのEC事業の成長の定義は流通総額の増加です。そのためにロハコ事業をコントロールしたいという狙いは明白です。私は、これまでヤフーとロハコ事業について何度も協議しましたが、「こんな赤字なんて大したことない」「むしろ流通総額を上げろ」という意向の方が強かった。だから、この期に及んで急にロハコが赤字じゃないかと問題視するのは非常に違和感がありますね。

8月2日の株主総会で社長再任が否決された後、記者団の前に姿を現した岩田氏。新経営陣へのメッセージとして「大株主の強いプレッシャーに対し、少数株主や従業員、取引先の顔を思い出して行動することを期待する」と語った Photo by Reiji Murai

──ヤフーの川邊健太郎社長は、ソフトバンクグループの孫正義社長から、アマゾンと楽天を追い抜くようにプレッシャーをかけられていたのでしょうか。吉岡さんは、そうした話を聞いたことはありますか。

 ああ、1月11日に川邊さんが来社されたとき、「孫さんから、楽天とアマゾンをいつ超えるんだという質問ばかりされる」という話をしていましたよ。岩田の隣で私も聞きました。まあ、孫さんのプレッシャーって私は直接見たことがないので断定的なことは言えませんが、お立場としてそういうものもあるのかもしれませんね。でも、だからといって、アスクルが赤字を出してロハコの流通総額を拡大させるという話には全くならないです。