ラマダンはイスラムの“お正月”

 「断食なんて大変ですね。ラマダンはつらいでしょう」

 あなたは気を使ったつもりでも、こう言うのはNG。イスラム教徒は気を悪くします。

 日本人には「ラマダン=断食をしなければいけないつらい時期」と修行のように捉えている人が多いと思いますし、確かに一ヵ月間、日の出から日没まで食事も水も断つのですから、肉体的にはハードです。

 私もエジプトに住んでいた頃にトライしたことがありますが、飲まず食わずの日中に備えて、日の出前に起きて食事をするので睡眠不足にもなります。

 英字新聞で、「アイスランドに住むイスラム教徒のつらいラマダン」という記事がありましたが、北欧にイスラム教が広まらなかったのは、春から夏の終わりには極端に昼が長くて夜が短いために、ラマダンがつらすぎることも一因ではないでしょうか。

 ちなみに戦争に行っている人、妊婦、子ども、老人、病人、旅人はラマダンでも断食が免除されます。ラマダンで重要なのは、断食でみながひもじい思いをし、貧しい人を思いやることです。

 ラマダンはまた、イスラム教徒にとって連帯感を強めるすばらしい一ヵ月です。「ラマダンカリーム! (ハッピーラマダン!)」という挨拶があるくらいで、イスラム教徒にこの挨拶をすると、間違いなく笑顔が返ってきます。

 ラマダンの時期は「イスラム暦の第九月」と定められているので一〇日ほど毎年早まっていきます。年末年始ではないのですが、みなが集まるという意味で雰囲気は日本の年末からお正月にどこか似ています。

 昼間はずっと我慢して、日没とともに家族みんなで集まって、大いにご馳走を食べて楽しく過ごします。

 ラマダンが終わった後の祭りが、イスラム教最大の祭りであり、三日間続くイード・アル・フィトル。長年イスラム教徒とつき合った経験から、重要なアポイントメントはこのイード・アル・フィトルの時期を外すことをおすすめします。

 なお、もう一つの重要な祭りが、巡礼月にあるイード・アル・アドハー(犠牲祭)で、その名の通り、家畜を供出します。

 あなたがもし、ラマダンの時期にイスラムの国に出張に行ったとしても、ホテルなどでは多くの場合普通に食事ができます。

 ただし、レストランの窓が覆われていたりついたてがあったり、食べている姿がまわりの人に見えないよう、お店側が配慮しています。特にイスラムで禁じられているお酒は、ラマダン時期には決してイスラム教徒の前で飲まないよう注意すべきでしょう。