モスクとイスラム芸術
イスラム教では偶像崇拝が禁止されたため、幾何学的装飾、文字装飾、植物の模様を使った装飾が発展しました。文字装飾と関連してカリグラフィー(書道)も優れたものが多く残されていますが、芸術にまで発展したのは、アラビア語文化圏と漢字文化圏のみの特徴です。
芸術としての書道がアラビア語と漢字で共通するというのは、私がイスラム教徒と文化について語る際の定番ネタです。世界各国の文化に合わせてネタを持っておくことは、ビジネスエリートに必須なのです。
どんな宗教であれ、その宗教施設を訪れることで、書籍やウェブとは違う形でその教えを“体感”することができます。
本来おすすめしたいのは聖地メッカ(カーバ神殿のあるマスジド・ハラーム)やメディナ(預言者のモスク)なのですが、イスラム教徒でないと街自体に入れません。私は、サウジアラビアのジェッダからメッカの街の入口手前まで行きましたが、そこには、日本語で「イスラム教徒以外立入厳禁」と書いてありました。その場で引き返したのは言うまでもありません。
また、もう一つの聖地であるエルサレム宮殿の岩のドームやアル・アクサーモスクはその手前までは行けますが、やはり内部は、イスラム教徒以外は立ち入り禁止です。
ここでは、非イスラム教徒の外国人でも入ることができるモスクやイスラム建築の代表的なものを挙げておきます。出張や旅行の際に、足を運んでみるといいでしょう。
イマームモスク(イラン・イスファハン)
サファビー朝ペルシャの首都であったイスファハンにあるイラン建築を代表するモスク。ペルシャンブルーの色使いは見事です。イスファハンは、一六世紀末にサファビー朝ペルシャの首都に定められ、「世界の半分」といわれるほど繁栄しました。
アヤソフィア(トルコ・イスタンブール)
もともとビザンツ帝国のギリシャ正教会の大聖堂でしたが、オスマン帝国の支配を受けてモスクに変容しました。ビザンチン建築とトルコ・イスラム文化が融合しています。
タージ・マハル(インド・アーグラ)
モスクではないが、ムガール帝国皇帝が妃のために建立した墓廟であり、インド・イスラム文化を象徴する建築物です。