これが憂うつでなくて、何なのでしょうか。増税によって税収の財源が潤沢になり、福祉が充実するかもしれない。結構なことです。しかし、我が世帯は確実に増税によって圧迫される。わびしいです。今後、さらに安いもやしを求めるようにもなるでしょう。
だが、この個人的なわびしさなんぞ、福祉の充実といった大義に比べれば些少であることは、理解しているつもりです。すなわち一般市民代表としては、甘んじて増税を受け入れ、夜な夜な枕を濡らし、布団の中でもやしをしゃぶるしかないのです――。
などと考えていた筆者のもとに、税務署から一通の封書が届いた。一般市民たる筆者にとって、税務署とはお金を徴収していく禍々しき存在であり、そこから届けられる通知なんぞ不吉なことが書かれているに決まっている。例によって「そのうち読む書類」の山の上に封を開けないまま安置した。
増税よりもプレミアム付
商品券に向けられる怒り
しばらくそのままでいたが、そのうち読む書類の山の高さと、それに目を通していないことへの不安は比例して増してくる。ある時点で不安が臨界点に達し、いよいよ未読書類に目を通して消化する作業に身を乗り出した。
税務署からの通知は軽減税率などについて書かれていて、流し読みしていると「プレミアム付商品券事業のご紹介」という項目を発見した。それによると2.5万円分の商品券が2万円で購入できるらしく、小さい子がいる我が世帯ではこれを利用する資格があるらしいのである。
これは大変なお得感であり、筆者は機嫌を直して「増税もまあ仕方なしだな」と前向きな気持ちで数日過ごした。そしてその後、プレミアム付商品券について詳しく調べて、「利用期間は未来永劫でなく税率引上げ後の6ヵ月の間」「“2.5万円を何回も”でなく“最大2.5万円”」といった制約があることを知り、そりゃそうかと思いつつ、限定的だと判明したお得感に憎しみを募らせている。
自己分析してみて面白いのは、こうなるとヘイトがもはや増税ではなく筆者を弄んだプレミアム付商品券の方により強く向かっている点である。元凶は増税であるにもかかわらず、である。人は元凶でなく目先の悪者に憎しみを向けやすい生き物なのだと改めて学んだ。
とはいえ、ここまで書いたものの、増税に対する感想は概ね「いた仕方なし」であり、お国の方針に素直に従う所存である。