キリンホールディングスがファンケルに約1300億円を出資すると発表して1カ月。ファンケルの株式を33%取得する手続きが9月6日に完了する見込みだ。キリンは今回の巨額投資で、「医と食をつなぐ事業」という新たな“第三の矢”の育成を目指すが、市場の反応は冷ややかだ。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
「信頼できる会社に託したい」
ファンケル創業会長の条件
「健康の領域は成長の最大テーマ。商品・販売領域で被らないファンケルとの提携の相乗効果を期待している」――。
ファンケルとの電撃的な業務提携の発表から約1カ月。キリンビールで酒類の営業を担当するある社員は、冒頭のように期待を込める。
8月6日、キリンホールディングスは、化粧品や健康食品のファンケルに1293億円を出資し、株式の約3割を取得すると発表した。この業務提携は両社ともにごく一部の幹部社員以外には知らされておらず、多くの社員にとっては寝耳に水。発表直後「社内は動揺しワタワタしていた」(ファンケル関係者)という。
「生きている間に信頼できる会社にファンケルと従業員を託したい」
会見でファンケルの創業者である池森賢二会長が開口一番にこう語ったように、この業務提携を持ち掛けたのはファンケルからだ。そして、池森会長が“身売り”する会社に求めたのは、従業員を大事にしていることと、ファンケルの経営の独立権を維持できることの2つの条件だった。