2019年はサイバー攻撃が新局面に突入しました。イスラエル国防軍が5月、「この拠点から自国へのサイバー攻撃があった」として、ガザ地区にあるイスラム組織の拠点を空爆したのです。サイバー攻撃・戦争の脅威はもはや「当然に想定されるべきもの」となっています。(経営共創基盤取締役マネージングディレクター 塩野 誠)
サイバー空間は国の領土か?
揺れる各国の解釈
5月のイスラエル国防軍の空爆は、サイバー攻撃に対して武力攻撃がなされたという点で、今後の歴史に残るケースです。武力攻撃とサイバー攻撃が組み合わさる「ハイブリッド戦」の次の段階であるともいえます。ハイブリッド戦では通常の軍事手段に加え、サイバー空間への攻撃や虚偽情報の拡散といった、純粋な武力攻撃とはいえない手段が複合的に使われます。
実はサイバー攻撃が武力攻撃に当たるか否かは、現在も議論があります。日本の直近の解釈としては「サイバー攻撃であっても、物理的手段による攻撃と同様の極めて深刻な被害が発生し、組織的・計画的に行われていると判断される場合、武力攻撃にあたりうる」(2019年4月、岩屋毅防衛大臣の参議院外交防衛委員会での発言)となっています。これを基にすれば、もし今後日本で発電所や交通網へのサイバー攻撃が行われた場合は、武力攻撃と見なされるかもしれません。