「たたかう産業医!」が教える<br />「絶対幸せなのは60点の人生」と言える訳井上智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医
島根大学医学部卒業後、さまざまな病院で内科・外科・救急科・皮膚科など多岐の分野にわたるプライマリケアを学び、2年間の臨床研修を修了。その後は産業医・精神科医・健診医の3つの役割を中心に活動している。現在は、産業医として毎月約30社を訪問。精神科医・健診医としての経験も活かし、健康障害や労災を未然に防ぐべく活動している。“金髪アフロドクター”として、ブログ「たたかう産業医!」やSNSを活用するだけでなく、コラムを担当したり、全国で講演したり、精力的に医療情報の発信を続けている。著書には、発売後に即重版になった『職場の「しんどい」がスーッと消え去る大全』(大和出版)がある。

後閑:アフロはプロフィール写真だけで、診療中にはかぶっていないんですか?

井上:仕事場ではやってないです。さすがにあれで会社に行ったら怒られるでしょうね。
 やっぱり予防医学は大事ですし、精神科医療ってクローズドな世界だからこそ情報を発信していきたいと思っています。

後閑:クローズドな精神科の世界の窓口を広げようとしているんですね。

井上:そうです。少しでも馴染みやすく、1ミリでもハードルが下がれば、という感じですね。

後閑:井上先生の本の冒頭に、モットーは「ラフに生きる」だと書かれていて、私はそれにすごく納得できました。

井上:ラフに生きるというのは、自分の中での1つのテーマになっています。
 精神疾患になって病院に来る人は、基本的に笑顔がなくなっていることが多いですし、お話を聞いていると、すごく細かいことを気にして、それで自分を苦しめ、自分をダメにしているという人も多いんです。そこは違うよなー、と思っていたんですよ。
 僕自身も適当な人間なので、全然緻密さもないですし、もっとラフに、大雑把にやっていきたいなというところを伝えているうちに、患者さんにも「確かにそうかもな」「自分は考えすぎて、根を詰めすぎていたんちゃうかな」なんて思ってくれる人も出てきて、そう思っているうちにちょっと笑顔が出てきたりもするので、「ラフ」というところに焦点を当てているという感じです。

後閑:「おおざっぱ」という「rough」と、「笑い」っていう「laugh」をかけての「ラフに生きる」?

井上:そうです。やっぱり一人だと、おおざっぱに考えられる人は少なくて、緻密なほうに深く考えてしまいがちです。ですから、誰かがそれを言ってあげないと、外から言葉が入ってこないとハッと気づけないと思うんですよね。

後閑:おおざっぱも笑いも、一人ではできないから、誰かと一緒に、ということですね。
 確かに一人で笑っていたら、ちょっとおかしいし、一人で考えるとネガティブな方向にいってしまいがちですね。

井上:そうなんですよ。

後閑:そこにもきっとつながるのでしょうが、本の中で書かれている「人生は60点で合格」という話も気に入っています。