失敗は他人に優しくできる余裕になる

井上:それでいいですよ。
 だって、自分がやってきた人生なんで、これができなかった、あれができなかったって、たぶん理由があって、それは時間がなかった、体調が悪かったとかいろいろですが、結局それも含めて自分なんです。
 自分の人生が60点、80点とか、そういうのも含めて自分だと思うんですよね。周りがどうこう言おうと。
 何でもかんでも自分の思ったことを達成しなければいけないなんてことはないし、達成できている人なんていませんよ。たぶん、今まで元気な人ですら、失敗していることが山ほどあると思うんです。それが大事だと僕は思っています。
 60点で生きるにしろ、ラフに生きるにしろ、それのコツはたくさん失敗することだと思っているんです。

後閑:失敗することなんですね。

井上:たくさん失敗というか、いろんな失敗をすることがすごく大事だと思っています。
 できなかったとか失敗したという感覚が結局、次の失敗の時にも、自分は何でもかんでもできる人間ではないしな、と思えるんですよね。自分の限界というものがある程度わかってくるので、失敗を重ねていくことがすごく大事だと僕は思っています。
 どんどん失敗してほしい。ほんとはそれぐらい。そこで本当に自分を振り返れる時間にもなるし、失敗したことを受け入れやすくもなります。すると、次の失敗も受け入れやすくなるし、なおかつ他人の失敗も受け入れやすくなる。

後閑:自分にマイナスの40点があったほうが、人に優しくなれるということでしょうか?

井上:そうです。心の余裕だと思うんです。
 100点なんて取り続けるんじゃなくて、失敗するというのが大事。自分にとって思い通りにいかないことにも、絶対意味があるんです。
 結局僕らは医療のプロとして現場でやっているとは思いますが、極論を言ってしまえば、患者さんの病気のことを100%はわかっていないんです。100%は理解できないし、本当に経験した人にしかわからないことがある。医療のプロの僕らが言うことより、経験者の言葉のほうが重たいと僕は思っています。
 思ってもいなかったがんになったとしても、その人から出てくる言葉は、他のこれからがんになる人にとって、かなり重みのある言葉になると思います。
 今、二人に一人ががんになる時代ですし、たぶん自分ががんで辛い経験をしている時に、二つ隣ぐらいには同じように苦しんでいる人や、これから苦しむような人がいるわけです。そういう経験者の人が出す声にはすごく重みがあるし、僕は価値があると思うんです。
 僕ら医者や看護師さんより価値があるので、なったこと自体がマイナスばかりではなく、そういう意味合いがあることがすごく重いと僕は思っています。

自分らしく生きるメンタルを保つために
◎おおざっぱに笑って生きよう!
◎100点目指して苦しむより、人生60点で楽しもう!
◎めっちゃ失敗しよう! その失敗が自分や他人に優しくできる余裕になる。