8月1日、人気お笑いトリオ、ネプチューンの名倉潤さんが、うつ病治療のため2ヵ月間休養すると公表しました。頚椎(けいつい)椎間板ヘルニア手術後のストレスから発症したとの報に、期間決めず休んでほしいなど反響が飛び交いました。憂うつな気分や無気力、悲観的な考えが続くうつ病。仕事や生活に大きな支障を来たし、中には悲観的な考えに駆られて自殺に及ぶ人もいます。このようなうつ病の症状からどのように解放されるのか、実際の症例をもとに、「森田療法流対処法」を解説します。(談/東京慈恵会医科大学附属第三病院院長・精神医学講座教授・森田療法センター長 中村 敬、構成/慈恵大学広報推進室 高橋 誠)
もう仕事に戻れない
30歳男性会社員の苦悩
今回は、30歳独身男性会社員のうつ病の事例をご紹介します。半年前からうつ状態が続き、「自分はダメ人間。生きている価値がない」というように自己価値感が損なわれていました。仕事は手に付かず、3ヵ月前から休職中でした。
悲観的、自己否定的な考えに加えて、早朝に目が覚め、疲労感、倦怠(けんたい)感、意欲の低下が続くため、近隣クリニックの紹介で、中村敬先生にご相談しました。
【相談の内容】
自分は生きていく価値もない
仕事に向かうエネルギーが湧かないため、3ヵ月前から仕事も休職中です。「もう社会復帰はできない」「生きていく価値もない」と思い詰め、苦痛に満ちた日々を過ごしていました。
他院精神科では抗うつ薬が処方されていましたが、本質的な改善は得られませんでした。会社の産業医からは、リワーク(復職支援)プログラムへの参加を強く勧められていましたが、とてもその気にはなれませんでした。過去の失敗を繰り返し想起しては煩悶(はんもん)し、自分を非難する考えが頭の中で繰り返し浮かんでいました。