野村證券を辞めてエメラダを創業した澤村帝我さん野村證券を辞めてエメラダを創業した澤村帝我さん

 フィンテックベンチャーのエメラダを起業した澤村帝我さん(33歳)も、新卒入社したのは野村證券だった。ゴールドマン・サックス証券への転職を経て、エメラダで銀行と企業をつなぐプラットフォーム事業を立ち上げた。

 澤村さんは、野村證券時代から一貫して、M&Aに携わる投資銀行部門に在籍していた。その中で、「企業が成長するための新しい金融の手段を考えたい」と、証券の世界から飛び出した。

 エメラダの主力サービスは、企業が抱える複数の銀行口座情報をオンライン上で一つにまとめ、それらを基に融資の申し込みや財務分析ができる「エメラダ・マーケットプレイス」という事業だ。企業が認めれば、銀行は口座残高や入出金情報を閲覧することができ、融資に必要な資料作成やコミュニケーションにかかるコストの削減を担っている。

 これらを取引先企業に提供しようと、複数の地銀や信用金庫がエメラダと提携を結んだ。地方の金融機関は業績が厳しく、コストをかけずに企業支援ができる事業への期待の表れだろう。

 澤村さんは、「ある意味で独善的であり、自己実現欲求が強く、不確実性を楽しめる人が起業に向いていると思います」と語る。安定志向が強い銀行員とは、百八十度異なる人物像だ。彼らのように起業を選んだ元証券マンが、証券会社や地銀といった金融機関の在り方を変えていく存在になるかもしれない。

「銀行・証券断末魔」その4
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