さらに、企業同士の株式持ち合いの解消が進んでいることから、事業会社では海外の機関投資家やアクティビストを含むヘッジファンドへの対応が迫られつつある。このため、「資本市場との対話ができる証券会社のアナリストを、IR(投資家向け情報提供)担当者として雇いたいというニーズが事業会社で高まっており、この傾向は続くだろう」(阪部氏)とみる。
また、証券会社や地方銀行が本業不振に陥り、稼ぎ方の大転換が求められつつある中で、新たな事業領域の誕生を見込んで起業する証券マンが出てきている。
IFAに地銀との連携ビジネス
起業に挑戦する元野村マンたち
18年2月に起業した堀江智生さん(32歳)は、前職の野村證券時代に輝かしい結果を残してきた。若手社員から十数人の成績優秀者だけが選ばれる、「海外修練制度」の1期生として米サンフランシスコに派遣。15年には、約3000人の若手社員の中で最も結果を残したとして、CEO(最高経営責任者)賞を受賞した。
しかし、組織として動く証券会社では、顧客に薦められる商品にどうしても偏りが生じてしまう。堀江さんは、「今の環境は真に顧客のためになっていないのではないか」と問題意識を持ち始める。どうにかしたいが、体制を会社単位で変えるのは「役員になるまでは難しいだろう」とも感じた。
ちょうどその頃、野村證券時代の同期が転職して独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)になったことが業界でうわさになっていた。IFAとは、特定の証券会社に属さずに、独立した立場から顧客に対して運用商品の選定や戦略を助言する存在だ。
IFAならば、提案の自由度は高く1人の顧客とじっくり向き合えると魅力を感じた。16年に堀江さんは香港の子会社への出向を経験するが、海外ではすでにIFAが一般的だと気付いた。将来、日本にも同じ流れが到来すると実感し、自分がつくるべき会社の姿が見えたという。