今年から欧州で施行された新たな金融規制の「MiFID2(第2次金融商品市場指令)」新たな金融規制「MiFID2」は欧州で施行されたものだが、国内の証券会社も到底、無縁ではいられない Photo:REUTERS/アフロ

今年から欧州で施行された新たな金融規制の「MiFID2(第2次金融商品市場指令)」。このあおりで、キャリアに不安を抱いた証券会社の株式アナリストなどリサーチ(調査)業務の担当者が、運用会社側へ移ろうとする流れが強まっている。そんな業界内の人材流動をめぐる水面下の動きを探った。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田幸平)

「5年後には相当、限られた席を奪い合うことになるかもしれない」。ある中堅エコノミストが昨年、国内の証券会社から運用会社へ転職した。その理由は、リサーチ(調査)部門を歩んできたキャリアの先行きをめぐり、冒頭のような将来への不安が頭を離れなかった点にある。

 同氏がこうした考えに至ったきっかけは、今年1月からEU(欧州連合)で「MiFID2(ミーフィッドツー、第2次金融商品市場指令)」という新たな金融規制が施行されたことだ。これにより、今まで一緒くたにされがちだった運用会社と証券会社の間で生じる取引執行費用とリサーチ費用の取り扱いに関して、明確に分離させるよう義務付けられた。

 業界関係者にとって、この影響は大きい。従来は証券会社が運用側の投資家に調査リポートを無償で提供する代わりに、売買を委託してもらうという慣行が成り立っていたが、それが通用しなくなったからだ。証券会社としては、取引執行とリサーチの「セット販売」ができなくなり、必ずしも明確化されてこなかったリサーチのサービスへの「値付け」を行うことが必要になった。