仮想通貨を巡る中国の深謀遠慮、「アリババがリブラ参入」騒動も米フェイスブックの仮想通貨・リブラを巡っては、欧米や日本では懸念を指摘する声が目立つ。この構想の可能性に一番気付いているのは、中国かもしれない Photo:Chesnot/gettyimages

米フェイスブックの主導する仮想通貨・リブラは、まだ始まってもいないのに悪評が高い。各国の中央銀行は、金融政策への支障やマネーロンダリングの懸念を主張し、全面的に規制モードで進行中だ。そんな中、リブラに多大な関心を寄せる国がある。中国だ。 (ダイヤモンド編集部 杉本りうこ)

「えっ、中国のアリババ集団がリブラをやるの? しかも日本で?」。今夏、仮想通貨関係者の間でひそかに注目を集めた“異変”があった。リブラとはもちろん、米フェイスブックが主導する仮想通貨の構想だ。発行主体はフェイスブックが加盟している非営利団体のリブラ協会(本部・スイス)。ブロックチェーン技術を使い、2020年前半の発行開始を目指している。

 リブラ協会は構想のメンバーとなる企業・団体(協会加盟者)を公開している。現時点ではフェイスブック以外はマスターカードやペイパル、ウーバー・テクノロジーズなど米国の企業・団体が中心だ。中国はおろか、日本を含むアジアの企業・団体はまだどこもメンバーとなってはいない。

 にもかかわらず、なぜ中国のハイテクガリバー、アリババの名前が仮想通貨関係者の間で飛び出したのか。その理由は、インターネットのドメイン登録にある。

 フェイスブックがリブラ構想を発表したのは6月18日。まさにその日、アリババ傘下のクラウド子会社、アリババ・クラウド・コンピューティング(阿里雲)の法人名義で、「libra」表記を含むドメイン登録が複数あったのだ。そのうち2件は、日本を示す「jp」の表記を含んでいた。ドメイン登録は通常、何らかの活動を始める際に行う。このため、「アリババがリブラに関連する事業の展開を、日本で予定しているのでは」とみられたわけだ。