素直さがあれば何からでも学べる
小宮一慶(こみや・かずよし)経営コンサルタント 株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO
10数社の非常勤取締役や監査役、顧問も務める。1957年大阪府堺市生まれ。京都大学法学部を卒業し、東京銀行に入行。84年から2年間米国ダートマス大学経営大学院に留学し、MBA取得。 帰国後、同行で経営戦略情報システムやM&Aに携わったのち、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。その間の93年初夏には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。94年5月からは日本福祉サービス（現セントケア・ホールディング）企画部長として在宅介護の問題に取り組む。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。2014年より、名古屋大学客員教授。著書に『ドラッカーが『マネジメント』でいちばん伝えたかったこと。』『社長の教科書』『経営者の教科書』（ダイヤモンド社）、『どんな時代もサバイバルする会社の「社長力」養成講座』『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』（ディスカヴァー・トゥエンティワン）、『「1秒！」で財務諸表を読む方法』『図解キャッシュフロー経営』（東洋経済新報社）他、140冊以上がある。
これは、私がオービック本社で同社のお客さま向けに講演をしたときのことです。
講演会場には300人ほどの人が集まっていましたが、最前列の端に年配の男性が座っていて、とても熱心に私の話を聴いてくださっている姿が目に留まりました。
そして、講演が終わって控え室に戻ると、その男性が私のあとについて控え室に入ってきたのです。周囲の人がそれを止めなかったので不思議に思っていると、なんとその方がオービック創業者の野田順弘さんだったのです。
野田さんは、「お話を聴かせてもらって有難うございました」と言って会社の中を自ら案内してくださいました。
さらに、ちょうど日本経済新聞で野田さんの「私の履歴書」が掲載され、それが1冊の本にまとまったばかりのときだったので、私にサインした本もプレゼントしてくださいました。
私の話に真剣に耳を傾けてくださった野田さんの姿から、安岡先生の言葉を思い出したものです。
もう1人、カー用品販売大手イエローハット創業者の鍵山秀三郎さんの言葉もご紹介しましょう。
私は昔、ある方から紹介を受けて鍵山さんのもとに通っていた時期があるのですが、当時、鍵山さんは「どんな本を読んでも必ず役に立つことが書いてある」とおっしゃっていました。
このように素直に学ぶ気持ちがあれば、つねに学びを得ながら経営者として成長することができるでしょう。
しかし、素直さも謙虚さもなく批判するばかりの人は、ただの批評家で終わってしまいます。
ちなみに、経営コンサルタントの先輩である一倉定先生は「評論家社長は会社を潰す」とおっしゃっていました。評論家は、経営者には向きません。
「評論家に終わらず、素直に学ぶ」。
そして、評論家は実践しません。口だけです。
