今、社長の人も、これから社長を目指す人も、さらにレベルアップ、スキルアップするためには、何をどうすればいいのでしょうか? 人気コンサルタント小宮一慶氏の最新刊『社長の成功習慣』(ダイヤモンド社、9月5日発売)は、経営者になる人にぜひ身につけてほしい50の行動習慣について解説した社長のための教科書です。本連載では、同書から抜粋して、経営者としていっそう成長するためのポイントについてお伝えしていきます。

人から本を勧められたとき、素直に読んでみる習慣はありますか?Photo: Adobe Stock

人を批判することは、だれでもできる

 連載4回目でお話した「10年後を読む能力を高める」と関連しますが、もう1つ、環境の変化を読む能力を高めるために大切なのは「素直に学ぶ」ことです。

 私は松下幸之助さんが好きで、これまでに松下幸之助さんに関する本も2冊出していますし、講演でもよく松下幸之助さんのお話をします。

 あるとき、私の講演を聴いた人から批判を受けたことがありました。

 その人は「松下幸之助は下請けをいじめたこともあるし、女遊びもすごかった」というものです。悪い面もあったのだから、そのような人物のことなど聞く価値がない、とでも言いたいようでした。

 私はその人に「あなたが経営している会社は、売上は800億円くらいあるんですか?」と尋ねました。

 800億円というのは、当時のパナソニックの売上の1%です。実のところ、その人の会社の売上が10億円にも満たないことを私は知っていました。あえてそのような質問をしたのは、その人に謙虚さが足りないと思ったからです。

 人を批判するのは、簡単です。

 完璧な人間や完璧な会社はどこにもありませんし、松下幸之助さんだってそれは同じです。

 しかし、松下幸之助さんは日本では20世紀最高と言っていい経営者であり、素直さや謙虚さを持っていれば、その言動から学べることはたくさんあるはずです。

 素直に、謙虚に人の話が聞けるかどうかというのは、経営者としてというだけでなく、1人の人間としてとても大事です。

 思想家の安岡正篤(まさひろ)先生は著書の中で、「話の聞き方を見ていると、その人物の練れ具合が分かる」と述べておられます。これは私自身、のべ3000カ所以上で講演してきた経験からも間違いないと思っているところです。