不安になった理由で一番多かったのは、「この会社できちんと勤まるかどうか」だという。学生優位な状況で、検討材料となる企業の情報も十分にあるはずなのに、その企業で働く具体的かつ正確なイメージがつかめている学生は決して多くない。

 また、「新卒は3年以内に3割辞める」という状況も変わらず続いている。経団連主導の就活ルールが来年から廃止になるなど、新卒採用が過渡期を迎えるなかで、現在の売り手就活の課題はどんなところにあるのだろうか。

情報過多でも“感覚”を信用する学生
「ビビビ就活」の問題点

 人材のミスマッチや新卒採用についての調査・研究を行うパーソル総合研究所シンクタンク本部リサーチ部・主任研究員の小林祐児氏は、情報過多といわれる現在の就活市場の問題点をこう話す。

「人手不足を背景に、企業側も人を集めるために“いいこと”を言おうと、提供するイメージに上方修正圧力がかかる。一方で学生は、そうした公式情報を信じず、偏った“自分の目”を頼ることになる」

 実際、学生が「信用する情報源」は意外と限られている。パーソル総合研究所が2019年に実施した調査によれば、学生の就活における相談先(親や先輩、教授、志望企業の社員など)の数の平均は1.89種類(※)と、決して多くはない。
※就職活動と入社後の実態に関する定量調査(パーソル総合研究所・CAMP)

 都内の私立大学に通うAさんは、「安定性」と「働き方」を重視して会社を選んだ。根拠となったのは、アルバイト先の社員のアドバイスだ。仕事がやりたい内容かどうかも大事だが、給与が安定しているかどうかや休みがきちんと取れるかどうかも大事だと言われた。自身の企業探しにおいて、そのアドバイスを大いに参考にしたという。

 相談した人の意見が必ずしも正確であるとはいえないが、OB・OG、親、先輩など、近しい人の意見が「公式情報との比較で、“もっともらしく”見えて過信してしまう」(小林氏)傾向にある。限られた相談先の意見を信用し情報が相対化できていないことが、学生の視野を狭めたり、自分に合った判断ができなかったりする一因となりうるのだ。