文字に全く興味のない子が
1週間でひらがなを覚えられたワケ

 そんな状況を変えたのは、折り紙でした。

 園長は折り紙がとてもうまくてね、みんないつも「園長先生、ライオンさん折って」「ペンギンさん教えて」って言いに来ます。ある日マサくんも、「園長先生、ゾウさん折って」と言いに来ました。でも、園長は用事があったので「紙に自分の名前と折ってもらいたいものを書いて、持ってきてください。書いてもらわないと、忘れちゃうからね」と言ったそうです。

 するとマサくんは「えー、ぼく、字書けないもん」と胸を張って言う。そこで園長が「じゃあ、先生でもお友だちでもいいから、だれかに書いてもらってくださいね」と言うと、「わかった!」と字の書ける友だちを探しにいきました。
 
 それを何回か繰り返したとき、マサくんはハタと気づいたみたい。「文字ってやつを書けると、どうやら便利らしいぞ」と。

 それで、私のところにピューッて走ってきて、「大川先生、ぼく、名前書きたい!」。「ああ、ようやく文字に興味を持ってくれたわ」と胸をなでおろしつつ、教えてあげました。そしたらもう「知りたい」の気持ちが強いから、「もっと、もっと」でね。結局、1週間足らずで50音すべて覚えてしまいました。子どものやる気って、すごいのです。

「文字を覚えたい」と思う前のマサくんに「自分の名前が書けると便利よ」といくら言い聞かせても、「ふうん」でおしまいだったでしょう。

 大切なのは、なにからなにまでお膳立てして会得させることではなく、「○○したい!」と思える機会や環境をつくること。そのために、あの手この手を使い、工夫をこらすの。大人の腕の見せどころですね。

 無力な赤ちゃん時代を知っているお母さん、お父さんにとって、子どもはいつまで経っても「なにもできない子」に見えてしまいがちです。2歳になっても、3歳になっても、いえいえ4歳になったって、どこか赤ちゃん扱い。ついつい手と口が出てしまいます。