深掘型アプローチ
次に、得意分野をさらに深める「深掘型」のケースを紹介しましょう。
先ほどのガス会社経理部のマネジャーは、強みの深掘りに関して、次のような事例を紹介してくれました。
「38歳の男性の部下が、資材部から経理部に異動してきました。当初彼が期待していたよりもルーティンワークが多いため、モチベーションが下がっていたようでした。
この部下の働きぶりを見ていると、会議運営が上手く、無駄がなく、メンバー育成もできることがわかりました。
そこで、『「時短」のための業務改善プロジェクトがあるけれども、やってみる?』『あなたのマネジメント力をさらに強化できると思うけど』と声をかけたところ、『是非やりたい』という答えが返ってきました。
業務の可視化によってムリ・ムダをなくす活動なのですが、チームを上手くまとめて、意欲的に働いています」
この男性社員は、対人スキルに強みがあるといえます。観察の結果、後輩指導やミーティング運営という基本スキルを持っていたことから、業務改善プロジェクトを任せて、彼の強みを、小集団マネジメント力という中級レベルに引き上げることに成功しています。
ここで「深掘型アプローチ」を構造的に解説しておきます。
図表3-6を見てください。前回解説したように、ビジネスパーソンのスキルは、コンセプチュアル(概念)・スキル、ヒューマン(対人)・スキル、テクニカル(専門)・スキルに3分類することができますが、それぞれのスキルにはレベルが存在します。
先ほどの中堅社員は、1対1の対話や指導等、基本的なヒューマン・スキルを持っており、それを、小集団の運営という中級レベルのヒューマン・スキルに引き上げました。
このように、深掘型アプローチでは、強みのカテゴリーを特定し、そのカテゴリー内でスケールアップする形で強みを引き上げます。