是正型アプローチ

 最後に、強みを阻害するような致命的な弱みを修正する「是正型」について説明します。
ガス会社・営業部のマネジャーの声を聞いてみましょう。

「ある中堅の部下は『自分の意見をストレートに伝える発言力』を持っていますが、言い方によってはパワハラになる恐れがあります。
 問題のある会話を聞いた直後に、別室で『あの言い方はないよ』『もっと建設的な議論になるような言い方をしたほうがいいよ』と、危なっかしい場合には、修正するようにしています」

 この中堅社員は「発言力」という強みを持っていますが、その伝え方はハラスメント問題を引き起こす可能性があるという意味で、「致命的な弱点」です。

 伝え方の問題を是正することで、本来持っている発言力を生かすことができるわけですから、「是正型」のアプローチが必要となります。

 同様に、商社・営業部のマネジャーも次のようなケースを紹介してくれました。

「30代前半の男性の部下がいますが、彼の強みは『馬力』です。執着心も強く、困難をどう乗り越えるかを考える力を持っています。
 しかし、一歩間違うと『傲慢』になってしまうので、『君の気持ちはわかるけど、仲間の協力を得られるようにしないとね』と伝えています」

 強みも「行き過ぎる」と致命的な問題を引き起こしかねません。

 次の事例は、せっかくの強みが生かされないケースです。コールセンター・事業運営部のマネジャーは、次のようなエピソードを語ってくれました。

「係長クラスのムードメーカーの部下がいます。彼の強みは、メンバーを育てる力で、思いを伝える熱量はとても強いものがあります。
 しかし、大雑把に、感覚だけで教えているために、ときに空回りしている点が弱点です。そこで、『相手に伝わる共通言語を使って、ロジカルに伝えることで、より育成力が高まるよ』と指導しています」

 この部下の事例は、「論理的な伝え方」に関するスキルを伸ばすことで、もともと持っている「育成力」に磨きがかかるケースです。

 新たな軸をつくるまでいかなくとも、弱みを若干是正するだけで、本来の強みをさらに伸ばすことが可能になるといえます。