いま人材育成の現場で最もよく使われているキーワードが「経験学習」だ。なぜ、マネジャーは部下の「経験から学ぶ力」を高めることが必要なのか。どうすれば部下の成長を効果的に支援できるのか。日本における経験学習研究の第一人者・松尾睦氏の最新刊『部下の強みを引き出す 経験学習リーダーシップ』より、内容の一部を公開する。

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 前回の連載「部下の中に眠っている『潜在的な強み』を探る方法」で、部下や後輩の持つ顕在的・潜在的な強みがわかったとしましょう。次に必要なことは、その強みをどのように引き出したり、伸ばしたりするかという点です。

 育て上手の指導方法を分析した結果、図表3-5に挙げるような3つのアプローチがありました。

・特定のスキルや能力に絞り込み、それを徹底的に伸ばす「深掘型」
・新しい強みの軸を増やし、強みの幅を広げる「拡張型」
・強みを阻害するような致命的な弱みを是正する「是正型」

 自動車関連会社・技術部のマネジャーは、強みの伸ばし方について次のようにコメントしています。

「人材には、新しいことをやりたがる人と、変わりたくない人がいます。
 新しいことに挑戦するタイプの部下に対しては、その人の強みを中心に、高い目標を与えて、いろいろな仕事をさせると、それを楽しむことができます。変わりたくないタイプの部下には、仕事は広げずに、その人の強みを深める方向でストレッチしたり、効率化させるほうがモチベーションが上がります」

 新しいことに挑戦する志向性があり、そのポテンシャルがある場合には「拡張型」が向いており、変わりたくない人や、特定の強みが深化する可能性が高い人は、得意なことを伸ばす「深掘型」が適しているといえます。

 また、「ハラスメント」発言や、攻撃的な言動といった致命的な弱みが本人の強みを阻害する場合、その弱みを標準レベルまで是正する「是正型」のアプローチが必要になります。

 それでは、あるガス会社のマネジャーのインタビューを中心に、これら3つのアプローチについて詳しく見ていきます。